駒崎 弘樹 公式ブログ 提言・アイデア

半径16kmの壁を撃破!フローレンスの政策提言により、安心・安全の病児保育を支える政策が実現!~病児保育中の往診・距離規制が緩和!~

フローレンスでは代表・駒崎が国家戦略特区の委員会に有識者として参加し、政策提言を行っています。

そしてこの度、フローレンスが行ってきた提言のひとつ、
「病児保育時に行う往診については、“診療所からの距離が16km以内の場合にのみ診療報酬を支払う”といった距離規制を外すべき」という提言が厚生労働省に認められ、実現しました!

 *国家戦略特区とは?・・・産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成に関する施策の総合的かつ集中的な推進を図るため、2015年度までの期間を集中取組期間とし、規制全般について再検討し、突破口を開いていくものです。
首相官邸による詳細情報はこちら

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【政策提言した背景① ~病児保育中の往診とは~】
フローレンスは2005年から訪問型病児保育を展開してきましたが、
更に2012年からは訪問型病児保育の現場に医師がかけつけて診察する(往診する)、という全国初の試みを始めました。

これには、2つの理由がありました。

●より病児保育の安全性を高めるため
訪問型病児保育は、預かる前にかかりつけ医の診察を受けてから保育していますが、子どもの体調は変わりやすく、急変等のリスクがあります。また、障害のある子の場合などは病児保育の困難性が増します。往診によって、こうした課題が解決されます。

●ママドクターの社会復帰
小さな子どもを持つ女性医師は、宿直や夜勤ができないため、出産前に勤めていた病院を一旦辞めざるを得ないことが多いです。一方で、医療の世界は日進月歩であり、数年間のブランクがあると、元の専門領域に戻っていくことはどうしてもハードルが上がってしまい、なかなか難しくなってしまいます。
せっかく専門領域を深めていた女性医師が、妊娠・出産というライフイベントによって、キャリアを中断せざるを得ない状況があることは医師不足の社会状況を見ても大きな損失です。そこで、病児保育現場への往診であれば、日中の短い時間で可能で、チームを組めば、子どもの用事で休まなくてはいけない時は休める、子育て中の医師でも働ける環境を創れることに気がついたためです。

このような背景で始めた往診によって、訪問型病児保育は、より安全になり、利用会員の安心感も高まりました。また子どもたちの回復も早まり、大きな成功を収めました。

【政策提言した背景② ~往診 半径16kmの規制~】
しかし、「医療行為の実施場所と病院・診療所の距離が16kmの範囲内の場合でしか診療報酬が支払われない」というルールがあり、実質的には16km以上離れた場所に往診することができませんでした。

日々の病児保育では、ぜんそくの子の吸入や鼻吸いなど、保育中に医師が処置をすることで子どもも体が楽になり、治りを早められるケースもたくさんあります。
本当は往診に行ってあげたいのに距離規制が
あるために断念せざるを得ないことも多く、何とかしたいという想いがありました。

16km規制があるままの状況で、必要な家庭にくまなく往診することを実現するには、フローレンスの提供エリアが拡大するたびに地域を少しずつずらして複数のクリニックと提携を繰り返していかねばならず、そういった体制づくりも負担が大きく現実的ではありませんでした。
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しかし今回、病児保育などの用途に限定してその規制が緩和されたことで、往診を必要とするより多くの子どもを診療できるようになり、より安全安心な病児保育を実施できるようになりました。
往診を訪問型病児保育と組み合わせることで、他の事業者も安全に保育を提供できるようになり、現在は極度に不足している病児保育インフラを広げていくことに繋がります。

また、往診が威力を発揮できるのは、病児保育分野に留まりません。
これまで様々な理由で病院に出向いて医療を受けづらかった人たちにとっても医療が受けやすくなる可能性があり、とても画期的なことです。

たとえば、今回の改変は下記のような医療的なアウトリーチに応用されれば、
今まで見過ごされてきたニーズに対応できる、画期的な福祉インフラになり得る可能性もあります。

◎重度障害児への往診
フローレンスでも障害児の保育を行っていますが、重症心身障害児や医療的ケアの必要な重度の障害児の場合、クリニックに行って診察を受けるのも、非常に大変なことです。
感染に弱く重篤化しやすいため、往診がもっと気軽に使えれば、重篤化リスクを低減できます。

現在は、小児在宅医療機関自体が少なく、巡回可能患者数自体にも限りがあるため、往診専門クリニック等が突発的な需要をカバーしていくことは大きな意義があるでしょう。

また、今後は下記のようなことにも活用できる可能性も拡がればと考えています。

◎ひきこもり家庭や児童養護施設への往診
若年ひきこもり当事者達の、およそ3割程度は精神的に何らかの疾患を抱えていると言われています。(若者支援団体へのヒアリングより)
そうしたひきこもり当事者は、精神科等への通院も拒否するため、治療の機会を得ることはできません。しかし、そうした家庭に直接精神科医が往診に行くことができれば、これまで得られなかった治療への道が開かれるでしょう。

また、児童養護施設で、虐待等でトラウマを負った子どもたちのところに、精神科医が往診することができれば、児童養護施設の子どもたちの福祉が向上し、将来の精神疾患の発病率や虐待加害者になる確率を下げられることにも繋がります。

往診に関する規制緩和によって、こうした制度の狭間に落ちてしまっている福祉的な領域に、医療的なアウトリーチを組み合わせることが可能になり、困っている人たちを助けられる可能性がもたらされると言えるでしょう!


今回の政策実現にあたっては、厚生労働省や国家戦略特区の委員会の関係者の方々が、私たち現場の声に耳を傾けてくださり、初めて提言した2014年10月からわずか8か月あまりで非常にスピーディーに制度に反映されました。

行政制度や政治も突然大きなことは変えられないかもしれませんが、
こういった具体的な一歩から変えられることも多々あると実感しており、提言に耳を傾けてくださった方々にも感謝しています。

フローレンスではこれからも、事業を通じて自らが砕氷船となって道を開いていくと同時に、事業での知見をもとに政策提言し、よりたくさんの人を助けるための制度化に貢献していきます。

これからもフローレンスの応援をよろしくお願いします!


*なお、今回の規制緩和にともなう、フローレンスの病児保育における往診可能エリアの拡大については、運用体制の再検討を含め、今後対応していく予定です。

フローレンスの病児保育について詳細はこちら

(*厚生労働省 平成27年6月30日発行 「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項 について」(平成26年3月5日保医発0305第3号)に関する「疑義解釈資料」に明記」)

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