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【献本御礼】『NPOで働く 「社会の課題」を解決する仕事』


本書は、NPOで働きたい、と思っている人への大きな杖になるだろう。

NPOで働く NPOで働く
工藤 啓

東洋経済新報社
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僕が『「社会を変える」を仕事にする』を出したのが2007年起業をしたころ(2003年~2005年)の経験で、その当時のNPOへの無理解や社会起業の知名度の無さ等から、「これは一般の人にも知ってもらわないといけない」と思って出版させて頂いた。当時は社会的企業や社会起業なんてほとんど知られていなかったので、過剰なまで分かりやすく文章を作っていかねばならなかった。
執筆当時、ざっくりとでも「事業で社会問題を解決する」ことを知ってもらわないといけなかったことから、詳しい経営に関する諸々はすっ飛ばさざるを得ず、実際にNPOを経営しようとする経営陣達には詳しい知識提供はできなかった。
しかし本書「NPOで働く」は、僕が書けなかったその部分にまで手を伸ばし、誠実にもそれを装飾することなく語っている。
著者はNPO法人育て上げネットの代表理事である、工藤啓氏。僕よりも2つ上だが、同世代の経営者仲間として仲良くしてもらっている。だからというわけではなく、彼の誠実な筆致は、これからNPOを始めようとする人にはリアルな手引きとなるであろうことは、断言できる。
詳細は本書を読むべきだが、僕自身が「これはリアルだな」と感心した部分をあげたい。
・自社の従業員の年収が300万~350万くらい、というところを開示。普通、自社の人事情報を開示するのはためらう。NPOの場合、低くても「やっぱりNPOはそんなもんか」と見下されるし、高いと「NPOなのに私腹を肥やして良いのか」と非難を受ける。こうした情報ひとつ開示することにも、著者の「このセクターを伸ばしていきたい」という意気込みが見えよう。
・事務局長となる片腕を口説くとき「月5万しか払えないけど来てほしい」と伝えたこと。読者は安すぎて驚くだろう。しかし起業時なんて自分すらまともに食えないので、そんなもんである。僕も副代表に10万で動いてもらっていた。魂を賭けてくれるやつは、それでも来てくれるのだ。
・行政委託がなぜ儲からないか、を(控えめに、だがはっきりと)書いている。これは委託を受けている立場としては相当のリスクを取っている。いわばクライアントにダメだしをしていることになるからだ。
しかしこの点はNPOセクターの発展のためには決定的に重要だ。
行政からのNPO向けの仕事の多くが「利益を出すことを認めない」ものだ。行政向け見積もりに手数料や手間賃、利益の項目があることはほとんどない。コストと収入は相殺されるべきもので、違う見積もりを出すと受け入れてもらえない(場合が多数)。
なぜか?それは行政がそうだから。毎年決まった額が自動的に入ってくる行政は、入と出を合わせないといけないし、そもそも利益を出す意味もない。しかしNPOは事業維持のためには投資(社員の給料を上げる、新しいPCを買う、etc)をし続けなくてはならず、利益はその原資となる。
多くの行政ではそのことが理解されず、仕事を受けるNPOは不平等条約を結ばされる。じゃあ受けなきゃ良いじゃん。ビジネスセクターの方はそう言うだろう。その通り。しかしNPOは経済原則のみで動く集団ではない。例えば赤字になっても助けられる人を1人でも増やせるなら、やろうじゃないか、となるため、当座の資金提供をして事業を実施できる行政委託を受けるインセンティブは存在するのである。
こうした「行政委託のジレンマ」まで突っ込んで記述してくれている本書は、NPO業界の不当な下請け的な立場をきちんと世の中に出していく意味を持つし、更にはその是正に向けた動きにも繋がっていこう。
NPOを起業したい若者は、こうしたNPOを知る実話に事欠かない本書を読んでからでも全く遅くない。そしてシビアな現実を知ったからと言って萎える必要は全くない。
筆者も僕も、シビアな現実を苦笑しながら、一つ一つ地味に乗り越えてきたのだから。


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当記事はNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹の個人的な著述です。
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