駒崎 弘樹 公式ブログ 旧ブログ記事

24時間テレビ改革案を考えてみた


実はみんなが言うほど、24時間テレビは嫌いじゃないです。


なんと中学生の頃、24時間テレビの会場ボランティアをやっていたくらい好きです。
ええ、確かに芸能人が走ってゴールしたから何なんだよ、というツッコミは分かります。
これみよがしに可哀想なドラマをやって、可哀想さにカタルシスを得る、という屈折への違和感にも頷けます。
まさに偽善の代名詞的な風物詩である、というご意見も、ある程度そうだろうと思います。
とはいえ、何だかんだ言って寄付が集まって、少なくとも何らか困っている人たちのところに行くわけです。そのシステム自体は活かしたいわけです。ゆえに単に24時間disに勤しむだけでなく、どうやったら24時間テレビが良くなるだろうか、ということを考えることを通じて、チャリティそのものを考える契機にしたほうが生産的ではなかろうか、と思うのです。
まず社会事業のパフォーマンスを見る基礎の基礎。彼らのWEBから、集められたお金が「どのように使われるか」を見ることから始めてみましょう。
●24時間テレビ 募金の使われ方
http://www.ntv.co.jp/24h/contents/how2011.html
ここにあるように、
・福祉車両を買う
・障害者補助犬に関するDVD・ポスターを作成する
・障害者サービス機器の購入と提供
・海岸などを綺麗にする活動への助成
・里山を保護するための間伐などのイベント経費
というのが、主な使われ方のようです。
それぞれ、とても社会的意義のあることだと思います。とはいえ、本当にこれがベストなお金の使い方か、ということは議論の必要があるかもしれません。
というのも、NPOの世界においては「お腹が空いた人には、魚をあげるのではなく、魚の捕り方を教えましょう」と考えるためです。
なぜなら、お腹が空いた人に魚をあげても、次にお腹が空く時が来るでしょうし、さらにはその人は魚をくれる貴方に頼るようになって、自分でお腹を満たすよう努力することを阻害してしまうかもしれないためです。ですので、災害や緊急時を除いては、なるべく「魚の捕り方を教える」というアプローチになります。魚の捕り方が分かれば、その人はお腹が空いた時には、自分で解決できるようになっていくためです。
さて、このセオリーを当てはめてみるとどうでしょうか。懐具合が寂しい福祉団体やNPOに、福祉車両を贈呈するのは、魚をあげることに近いでしょうか、魚の捕り方を教えることに近いでしょうか。
もっと言うと、なぜ障害者団体やNPOは自分たちにとって不可欠な車両を、自分たちで買わないのか。お金がないから?ではなぜ儲からないのか。受益者である高齢者や障害者から十分サービス料金がもらえないから。では介護保険や障害者補助金をもらい、更に自主事業でビジネスを起こし、持続可能に稼ぐようにはなれないのか。
やれるでしょう。その挑戦で成果を生んでいるのが、知的障害者が働くパン屋さんであるスワンベーカリーであり、障害を持つ労働者の人材紹介事業で成功しているウィングルです。
例えば集めた募金を福祉車両という消費財に使うのではなく、福祉団体やNPOが、あるいは障害者自らが自分で新たなビジネスを立ち上げようとすることを、出資して、あるいは融資して助けてあげたらどうでしょうか。彼らの新たなビジネスが回り始め、利益をもたらしたなら、福祉車両を提供する以上の価値を生み出せるでしょう。
この考えを延長してみましょう。被災地支援に携わるNPO経営者として僕が感じるに、現在被災地にもっとも必要なものの1つとして、雇用があげられると思います。
例えば、被災地でこれから起業しようとしている、あるいは会社を再生しようとしている、または被災地で新規事業を立ち上げようという、非被災地の企業のプレゼン大会をしてみたら。プレゼン自体はTV局のノウハウで、取材も入れ込んできちんと説得性のあるものにする。視聴者は、「こいつの事業に賭けたい」と思ったら、自己責任で彼の口座に寄付をする。あるいは局が委託したNPOバンクに寄付をし、彼らを通じて融資を行う。
初期の物資支援から、復興フェーズになるにしたがって、起業したり、事業を誘致したり、そうした経済活動が何より重要になってきます。そこを国民一丸となって支えられる、そんなエンターテイメントを創ることだってできやしないでしょうか。
まとめるとこういうことです。寄付は投資である。社会的に弱い立場の人々の、自立につながるような形で活用しましょう、と。ものをあげたり、その場で終わってしまう「消費」だと、ちょっと勿体無い。せっかくの善意のお金が、最大の効果をあげられるように、彼らのひとり立ちに貢献できるような、投資的寄付を行なっていきましょう、と。
しかしそれでは番組にならない、と言われるかもしれません。なぜならそこにカタルシスは無いから。可哀想な人達を、可哀想だと涙を流せなければ、人々はテレビを見ない、と。いえ、僕はそうは思いません。
これから自らの足で立とうという人々の強い眼差しに、我々は胸を貫かれます。弱い立場にいると思っていた人々が、実は自分たちよりも立派であることを知った瞬間の感動に比べたら、いかに同情のカタルシスの底の浅いことか。
社会問題の延命と再生産を「消費」するのではなく、社会問題の「解決」に貢献するテレビであってほしい。そうでなければ、今日もまたTwitterで知った優れた外国のYoutube動画を見る人々が増えるだけでしょう。テレビのチャンネルをつけることなく。



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当記事はNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹の個人的な著述です。
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