駒崎 弘樹 公式ブログ 事業ニュース

制度変革成功!保護者の疾病、疲労などの場合でも、認可の居宅訪問型保育を使えるようになりました!

 

 ちょっと保育や児童福祉関連の専門的な話なのですが、地味にすごい話なので紹介します。

 

 家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準」が改正され、今年4月1日から、「保護者の疾病、疲労その他の身体上、精神上若しくは環境上の理由により家庭において乳幼児を養育することが困難な場合」も子ども子育て支援法で規定する、居宅訪問型保育を利用できるようになりました!

 

 

↑「家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準の一部を改正する省令」(令和2年3月26日)より抜粋

https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/hourei/H200326N0020.pdf

 

【居宅訪問型保育事業とは】

 居宅訪問型保育事業とは、保育を必要とする乳幼児の居宅において、家庭的保育者による保育を行う事業で、平成27年4月に施行された「子ども・子育て支援新制度」において、新たに認可事業として位置付けられ、公的給付の対象となっています。

 

(いわゆる、民間のベビーシッターとは異なり、自治体が認可した事業で、所定時間以上、かつ定期的に子どもを子どもの家(居宅)で保育する仕組みです。「認可ベビーシッター」というイメージですね)

 

 「家庭的保育者」とは、必要な研修を修了した保育士又は保育士と同等以上の知識及び経験を有すると市町村長が認める者です。

 

 改正前の対象児童は、原則として3歳未満の保育を必要とする乳幼児であって、次のいずれかに該当すると市町村長が認めたものとされていました

 

 ①障害、疾病等の程度を勘案して集団保育が著しく困難であると認められる場合

 ②保育所の閉鎖等により、保育所等による保育を利用できなくなった場合 

 ③入所勧奨等を行ってもなお保育の利用が困難であり、市町村による入所措置の対象となる場合

 ④ひとり親家庭の保護者が夜間・深夜の勤務に従事する場合等、保育の必要の程度及び家庭等の状況を勘案し必要な場合

 ⑤離島その他の地域であって、居宅訪問型保育事業以外の地域型保育事業の確保が困難である場合 

 

【親に疾病や障害があるという理由では利用不可だった】

 多くの自治体で、待機児童対策用と障害児用の居宅訪問型保育事業を実施しています。

 

 フローレンスは、複数の自治体で居宅訪問型保育を展開していますが、その中で、親に精神疾患や発達障害があったり、母親が夫から精神的DVを受けていて、子どもの養育が困難なケースをいくつか目にしました。これらは、たまたま待機児童がいて居宅訪問型保育を利用した家庭のケースですが、待機児童も障害児もいなければ、親の疾病などで養育が困難な家庭は居宅訪問型保育を使えませんでした。

 

 上記対象児童の要件④に「保育の必要の程度及び家庭等の状況を勘案し必要な場合」とあるので、親の疾病などで養育が困難な場合でも居宅訪問型保育を利用できると解釈できそうでしたが、自治体ではそういう解釈はされていませんでした。

 

 そこで、親に疾病や障害などがあり、養育困難度が高い家庭も居宅訪問型保育を使えることを家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準」に明記するよう国に要望したところ、基準を改正していただけました!

 

【各自治体のみなさん、親の疾病などで養育困難度が高い家庭も利用できるようにしてください!】

 

 これによって何ができるようになるかというと、

 

 例えば、

「児相に一時保護された子どもを家に戻すのは心配」みたいなシチュエーションの時に「家に戻す代わりに、毎日、居宅訪問型保育士が家で子どもをみます」という伴走型の支援の形をつくることができるようになります。

 

 また、「多胎児の育児で精神的に不安定。気持ちが塞ぎ込んで養育に支障があるけれど、母親は専業主婦で育休中ではない」みたいなシチュエーションでも、ソーシャルワーク的に使えるわけです。

 

 こうした「これまで保育ではなかなか救えなかった人たち」にアウトリーチできるツールとして、居宅訪問型保育を活用できる、ということになります。

 

 そんなわけで、居宅訪問型保育事業を実施している自治体の職員・議員のみなさん、条例や実施要綱を改正して、親の疾病、精神的疲労などで養育困難度が高い家庭も居宅訪問型保育を利用できるようにしてください!

 

 それと、我々が居宅訪問型保育を行う中で感じたこと。それは、保育者が家庭に入ることによって、家庭の情報を多く得られるだけではなく、通常の保育以外の支援(親の相談に乗る、簡単な家事の支援、行政への申請業務のサポートなど)も行うことができる事業枠組みであるということです。

 

 子育てに困難を抱えている家庭、DVや養育不全などの問題を抱えている家庭への居宅訪問型保育は、ソーシャルワークの役割も担っていて、必要に応じて、それらの家庭を行政や民間の支援につなげることができるものと考えています。

 

 国は動きました。次は自治体の番です。ぜひアクションをよろしくお願いします。親子のためのセーフティネットを、張り巡らせましょう。

 

追記

 既に杉並区※2、台東区※3などいくつかの自治体で条例改正済みです。

 

※1 厚生労働省「居宅訪問型保育事業の概要」

https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11202000-Roudoukijunkyoku-Kantokuka/0000075920.pdf

 

※2 杉並区家庭的保育事業等の設備及び運営の基準に関する条例の一部を改正する条例(令和2年5月29日)

https://www.city.suginami.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/059/805/58.pdf

 

※3 台東区家庭的保育事業等の設備及び運営の基準に関 する条例の一部を改正する条例(令和2年6月2日)

https://www.city.taito.lg.jp/index/kugikai/honkaigi/reiwa2/2020teirei2/02-dai2kai-gian.files/02-36.pdf

 

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