【あと4ヶ月】こども性暴力防止法の全国説明会が、いよいよ始まります。行く前に、これだけは確認してほしい
子どもに性暴力をふるった人が、処分を受けたあと、名前も経歴も変えずに、また別の場所で子どもに接する仕事に就く。
こんなことが、この国ではずっと放置されてきました。
被害に遭った子は、大人になっても苦しみ続けます。なのに加害者は、次の職場を見つけて、次の子どもの前に立つ。私はこの構造を知るたびに、どうしようもなく腹が立ちました。
その理不尽をようやく塞ぐための法律が、2024年6月に成立した「こども性暴力防止法」です。
こども性暴力防止法とは、学校・保育所・学習塾などの子どもに接する事業者に対して、従事者の性犯罪歴の確認、研修の実施、相談体制の整備、早期把握のための措置を義務づける法律です。正式名称を「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」といいます。施行日は2026年(令和8年)12月25日。この記事を書いている時点で、あと4ヶ月ちょっとです。
そして、その準備のための事業者向け全国説明会が、来月から始まります。
【最初に:「日本版DBS」とこの法律は、イコールではありません】
説明会の話に入る前に、ひとつだけ整理させてください。ここを取り違えたまま準備を始めると、あとで必ず慌てることになります。
この法律は、しばしば「日本版DBS」と呼ばれます。でも正確には、日本版DBSはこの法律の一部でしかありません。
性犯罪歴を確認する仕組み(=日本版DBSと呼ばれている部分)に加えて、この法律は、
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従事者への研修の実施
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子どもが相談できる体制の整備
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性暴力の兆候をつかむための早期把握の措置
まで、一連の体制づくりを事業者に求めています。
つまり、「前科のある人を採用しない」だけでは、この法律に対応したことにはなりません。そして実務の負荷でいえば、大変なのはむしろ後半のほうです。採用時の確認は手続きですが、研修も相談体制も早期把握も、施行日以降ずっと続いていく運用だからです。
この前提を持って説明会に行くかどうかで、聞こえてくる情報の質が変わります。
【説明会は全国13ヶ所。最速は9月3日の京都】
こども家庭庁が、全国13ヶ所で説明会を開きます。いずれも14:00〜16:00です。

⬆️こども性暴力防止法の全国説明会日程表
申込はこども家庭庁のページからできます。
一つだけ、実務的なアドバイスを。会場の定員は100〜300名で、すでにキャンセル待ちが出ている会場があります。一方、11月6日のオンライン配信に定員の上限はありません。近くの会場で迷っているうちに埋まるくらいなら、先にオンラインを押さえておくほうが確実です。
【義務対象のみなさんへ:決めるのは「誰がやるか」です】
学校や認可保育所などの義務対象事業者には、やるかやらないかの選択肢がありません。だから論点は一つだけです。
「この仕事を、誰が担当するのか」
犯罪事実確認、研修の実施、相談体制の整備、早期把握のための措置。この法律が求めているのは、単発の手続きではなく継続する運用です。誰かの「その他業務」に押し込んだ瞬間に、回らなくなります。
説明会に行く前に、園長・校長・法人本部で、担当者の名前を一つ決めておいてください。名前が決まっている状態で聞く説明会と、決まっていない状態で聞く説明会とでは、持ち帰れるものの量がまるで違います。
【認定任意のみなさんへ:「取らない」という選択が、何を招くか】
学習塾、スポーツクラブ、習い事、放課後の居場所。こうした民間教育保育等事業者にとって、認定(「こまもろう」認定)は義務ではなく任意です。
ただ、ここで冷静に考えてほしいことがあります。
認定を受けなければ、犯罪事実確認の仕組みを使うことができません。
研修や相談体制の整備は、認定がなくても自主的にやれます。けれど、性犯罪歴の確認だけは、認定を受けた事業者にしかできないのです。
つまり2026年12月25日以降、日本中の子どもの居場所は、「性犯罪歴をチェックしている場所」と「チェックしていない場所」に、はっきり二分されることになります。
そして、子どもへの加害を意図する人は、当然のように後者を選びます。学校の採用で弾かれた人が、認定を取っていない塾に応募する。保育所で弾かれた人が、認定を取っていない教室に流れる。これは誰かが悪意を持って仕組むことではなく、制度の構造上、そうなるという話です。
だから、認定を取らないという判断は、「うちは今まで通りでいく」という判断ではありません。「弾かれた人の受け皿になるかもしれない」というリスクを引き受ける、という判断です。
もちろん、手間もコストもかかります。それでも、子どもを預かる仕事をしている以上、ここは引き受けるべきラインだと私は思っています。
【説明会に行っても、たぶん解決しない3つのこと】
ここからが本題です。
行政の説明会は、制度を説明する場です。とても大事なのですが、現場のオペレーションまでは面倒を見てくれません。だから次の3つは、聞いてもモヤモヤが残る可能性が高い。逆に言えば、ここを質問として持ち込めば、説明会の価値は何倍にもなります。
1. 既存の職員の確認は、いつまでに、何人分やるのか
新しく採用する人だけの話ではありません。今いる職員をどう扱うのか、経過措置はあるのか、施行日までに何が終わっていなければいけないのか。ここは事業規模がそのまま事務量になります。自分の組織の人数を数えてから聞きに行ってください。
2. 派遣・業務委託・ボランティア・内定者はどうなるのか
現場が一番混乱するのがここです。週1回だけ来る外部講師は。学生ボランティアは。来春の内定者は。「うちの場合はどうか」という具体的な形で聞かないと、一般論の答えしか返ってきません。
3.「相談体制の整備」とは、具体的に何を置くことなのか
これが一番ふわっとしていて、一番後回しにされやすい項目だと私は思っています。
相談窓口の電話番号を掲示すれば終わりなのでしょうか。子どもが本当に、大人の顔を見て「あの先生が怖い」と言えるでしょうか。言えないから、この法律が必要になったのではなかったでしょうか。
紙の上の窓口ではなく、子どもが実際に助けを求められる場所をどう作るか。ここは制度が答えを持っていません。それぞれの事業者が、自分で設計するしかない領域です。
【一緒に、ゼロにしませんか】
この法律は、事業者を疑うためのものではありません。子どもに関わる仕事をしている私たちが、「ここは安全です」と胸を張って言えるようにするための道具だと、私は思っています。
だから、まずは説明会に行ってください。オンラインなら定員の上限もありません。2時間の時間を作る価値は、十分にあります。
それと、あまり知られていないのですが、こども家庭庁は事業者向けの資料をかなり手厚く無償公開しています。解説動画や資料だけでなく、研修用の演習スライド、受講後の確認テスト、研修実施計画書や受講記録の様式まで揃っています。研修まわりは、正直これだけでもかなりのところまで自前でやれます。まずはこちらのページを見てみてください。
そのうえで、「規程も、研修も、相談窓口も、自前で全部は抱えきれない」という事業者さんもいると思います。
小規模なところであれば、単純に人手が足りない。一方で規模の大きな事業者さんは事情が違って、本業に直結しない業務を社内に抱え込むこと自体が非効率、という判断になることが多いはずです。拠点が増えるほど、規程の更新も、研修の受講記録の管理も、相談窓口の運用も、掛け算で重くなっていきますから。
理由は違っても、どちらも外に出すのも合理的な領域だと思います。
私たちつながりAIは、そういう事業者さん向けに「こまもろう認定・運用サポートパック」をご用意しています。規程・様式から、講師研修、子どもがLINEで相談できるAI相談窓口、認定申請の伴走まで一式のパッケージです。よかったら資料だけでも見てみてください。
でも、私たちのサービスを使うかどうかはどちらでもいいのです。大事なのは、2026年12月25日に、日本中の子どもの居場所が、去年より少しでも安全になっていることですから。
一緒に、子どもへの性暴力をゼロにしましょう。
【よくある質問】
Q. こども性暴力防止法はいつ施行されますか?
2026年(令和8年)12月25日に施行されます。2024年6月19日に成立した法律で、正式名称は「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」です。
Q. こども性暴力防止法と「日本版DBS」は同じものですか?
同じではありません。日本版DBSと呼ばれているのは、従事者の性犯罪歴を確認する「犯罪事実確認」の仕組みのことで、こども性暴力防止法の一部です。この法律はそれに加えて、研修の実施、相談体制の整備、早期把握のための措置という体制整備まで事業者に求めています。
Q. どんな事業者が対象になりますか?
学校や認可保育所などは「義務対象事業者」として、対応が法律上の義務になります。学習塾、スポーツクラブ、習い事教室などの「民間教育保育等事業者」は、認定を受けるかどうかが任意です。
Q. 認定を受けないとどうなりますか?
認定を受けない民間事業者は、従事者の性犯罪歴を確認する犯罪事実確認の仕組みを使うことができません。研修や相談体制の整備は認定がなくても自主的に実施できますが、性犯罪歴の確認だけは認定を受けた事業者に限られます。
Q. 説明会に参加できない場合、準備の情報はどこで手に入りますか?
こども家庭庁が事業者向けの解説動画と資料を無償で公開しています。法の手続や措置を解説した動画・資料のほか、研修用の演習資料(PowerPoint)、確認テスト(Excel)、研修の手引き、研修実施計画書や受講記録の様式まで揃っています。聴き取りの方法や情報管理措置といった応用編の資料もあります。
Q. 事業者は具体的に何をすればいいですか?
犯罪事実確認、従事者への研修の実施、子どもや保護者が相談できる体制の整備、性暴力の兆候を早期に把握するための措置の4つが柱になります。いずれも施行日以降ずっと続く運用になるため、担当者を決めて体制として設計する必要があります。
筆者について
駒崎弘樹。つながりAI株式会社 代表取締役。子どもに関わる事業者向けに、子どもがLINEで相談できるAI相談窓口と、専門職によるハイブリッドな相談支援を提供しています。
※本記事は2026年8月16日時点の公表情報にもとづいています。説明会の日程や定員は変更される可能性があるため、申込の際は必ずこども家庭庁のウェブサイトで最新情報をご確認ください。
参考リンク