こども性暴力防止法、監督等指針(案)と横断指針が発表されたので解説します
2026年8月25日、こども家庭庁で「こども性暴力防止法施行準備検討会」の第13回が開かれました。施行日は本年12月25日。残り4か月というこのタイミングで、事業者にとってかなり重要な文書がまとめて出てきています。
この日のテーマは大きく三つでした。
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監督等指針(案) ――行政が事業者の何をどう見るのかを定める、新しい文書
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横断指針の改訂 ――業界横断で「望ましい取組」を示す文書の全面アップデート
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施行ガイドラインの改正 ――既存のガイドラインの手直し(3点)
加えて、こども性暴力防止法関連システム「こまもろうシステム」のマニュアル素案と全国説明会の日程が示され、関係者からの準備状況のヒアリングも行われました。
前半でこれらを一通り解説し、後半で事業者にとって特に重要な2点――「第三者性のある相談窓口」と「動画を見るだけの研修はダメ」――を取り上げます。
まず、法の全体像を30秒で
こども性暴力防止法(正式名称は「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」)が事業者に求める措置は、大きく三つに分かれます。
① 犯罪事実確認
こどもと接する業務に就く人について、特定性犯罪の前科がないかを国のシステムを通じて確認します。前科がある場合、拘禁刑なら執行終了から20年以内、執行猶予なら判決確定から10年以内、罰金刑なら執行終了から10年以内が確認の範囲になります。新規採用者は従事開始前、現職者は施行から3年以内(認定事業者は認定から1年以内)、以降は5年ごとの再確認です。
注意したいのは、対象になる人の範囲が「先生」だけではないことです。法律の言葉では「教員等」ですが、判断は職名ではなく業務の実態で行われます(後述の3要件)。詳しくは監督等の観点のところで触れます。
ここで一点、よくある誤解を正しておきたいところです。「日本版DBS」と呼ばれているのは、この①犯罪事実確認の仕組みのことです。 英国のDBS(Disclosure and Barring Service)にならった前歴照会の制度を指す通称で、こども性暴力防止法そのものの別名ではありません。法律は①だけでなく、②安全確保措置と③情報管理措置まで含みます。そして事業者の実務負担がどこにかかるかというと、報道で注目された①よりも、むしろ②です。この記事の後半で扱うのも②の部分になります。
② その他の安全確保措置
未然防止、早期把握、相談体制、研修、調査、保護・支援、防止措置、対処規程。ここが今回の記事の主題になる部分です。
③ 情報管理措置
犯罪事実確認の結果は極めてセンシティブな個人情報ですので、取扱者の限定、管理規程の整備、保存期限後の廃棄、漏えい時の報告などが求められます。
そして、対象事業者は二種類あります。
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義務事業者:学校(幼稚園・小中高・特支など)、認定こども園、認可保育所、児童福祉施設、指定障害児通所支援など。法律上、当然に義務がかかります。
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認定事業者:学習塾、スポーツクラブ、放課後児童クラブ、認可外保育施設など。任意の認定制度で、認定を受けると義務事業者と同じ措置が求められます。
この「義務/認定」の区別が、今回の監督等指針を読むうえで効いてきます。
【新】監督等指針(案)とは何か
なぜこれが出てきたのか
これまで事業者が参照してきたのは、法律と政省令、施行ガイドライン、そして横断指針でした。ガイドラインには「講ずべき措置」が書かれ、横断指針には「望ましい取組」の具体例が並びます。
ただ、事業者の側から見ると、どこまでが義務で、どこからが努力目標なのかの線は読み取りにくいものでした。相談窓口を一つ置けば足りるのか、匿名相談まで用意しないと怒られるのか。研修は動画を配れば済むのか。ここが曖昧なままだと、真面目な事業者は過剰に構えますし、そうでない事業者は最低限で流してしまいます。
監督等指針は、その線を行政側から引く文書です。趣旨はこう書かれています。
法の規定に基づく犯罪事実確認実施者等に係る監督等について、こども家庭庁が準拠する事項を定めることにより、監督等の公正性及び透明性の向上を図ること
つまり、事業者を縛るための文書というより、行政が自分の監督の仕方を先に公開する文書です。ただし結果として、事業者から見れば「見られる項目のリスト」が公開されたことになります。
基本方針には「厳正にかつ効果的に実施する」という文言と同時に、「問題の発生原因及び是正策を明らかにし、犯罪事実確認実施者等の問題解決を図り……具体的な助言又は指導を行う」という文言も入っています。摘発ではなく是正を主眼に置く、という書き方です。
誰が誰を監督するのか
指針案は義務事業者向け(資料4-1)と認定事業者向け(資料4-2)の2本立てで、監督の担い手が分かれています。
義務事業者の場合
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こども家庭庁が見るのは、犯罪事実確認と情報管理措置
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その他の安全確保措置は、所轄庁(都道府県・市町村や文部科学省など)が業法に基づいて監督します
認定事業者の場合
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三つすべてをこども家庭庁が直接監督します
つまり、認定を取った民間事業者は、研修や相談体制の中身までこども家庭庁の監督ラインに乗ります。認定は任意の制度なのに、認定を取ると監督が濃くなるわけです。この非対称は、民間事業者が認定を取るかどうかを判断する材料になるでしょう。
なお義務事業者については、こども家庭庁と所轄庁が情報共有することも明記されました。定期報告で把握した措置の実施状況、報告徴収や立入検査を実施した情報、法違反の状況、行政指導や是正命令の状況などを、「所轄庁の権限で実施される対応に必要と認める範囲で」共有します。学校については文部科学省から別途通知が出る予定です。
監督の道具立て
指針案には、行政が使う手段が順番に並んでいます。
定期報告
事業者は年1回、措置の実施状況をこども家庭庁に報告します。庁側は期限到来分を順次確認し、報告内容の不備をチェックし、内容を精査して次の対応を判断します。この定期報告には、対象従事者に法定の研修を受講させているかも含まれます。
漏えい等報告
犯罪事実確認記録等の漏えいが起きた場合は速報と確報の2段階です。庁側は速報を受けた時点で被害拡大防止や原因究明の指導を行い、確報が出てこなければ直ちに催促します。
報告徴収
年間実施計画を策定したうえで、「定期報告内容又は漏えい等報告内容、通報等の内容、過去の指導等又は是正命令の実施状況その他の事情を総合的に勘案し、必要であると認める場合」に実施されます。期限内に応答しないと罰則の対象になります。
立入検査
選定基準は報告徴収と同じです。実施体制はこども家庭庁の職員2名以上、うち1名は参事官補佐以上。原則として対象施設と日時を事前通知しますが、「目的に照らし不適当な場合」は通知しません。デジタル技術の活用も可能とされています。拒否すれば罰則の対象です。
「通報等の内容」が判断材料に入っている点は見逃せません。外部から情報が入れば、そこから監督が動く設計になっています。
何を見られるのか(監督等の観点)
指針案の別紙に、行政が確認する項目が並びました。ここが実務上いちばん重要なところで、ガイドラインに散在していた記述が、チェックリストの形に並び替えられたと理解するとわかりやすいと思います。
犯罪事実確認について
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「教員等」に該当する者を適切に特定しているか(職種の分類、支配性・継続性・閉鎖性の3要件の判断)
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新規採用者・施行時の現職者・確認済みの者という区分に応じた期限を守っているか
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「いとま特例」(確認の時間がない場合の例外)を使う場合、要件を満たしているか、3月以内に実施しているか、その間の必要な措置(1対1を原則としない等)を講じているか、根拠書類を保存しているか
この一つ目、「『教員等』に該当する者を適切に特定しているか」が意外と厄介です。「教員等」は先生だけではありません。
判断は職名ではなく、業務の実態が支配性(こどもに対して優越的な立場にあるか)・継続性(日常的・定期的、あるいは不定期でも反復継続が見込まれるか)・閉鎖性(第三者の目が届かない状況があるか)の3要件を満たすかどうかで行われます。
この基準で見ると、対象に入ってくる職種はかなり広くなります。こども家庭庁の資料が例として挙げているのは、事務職員、用務員、一人でこどもを送迎するバスの運転手、継続性のある短期アルバイトやボランティア、双方向のやり取りが生じるオンライン指導の担当者、そして派遣労働者(この場合は派遣先が義務を負います)。逆に、1日限りのゲスト講師や録画配信のみの担当者は、継続性がないため対象外とされています。
「学校の先生と保育士だけリストアップすればいい」と考えていると、ここで漏れます。そして漏れたまま施行日を迎えると、後述する公表の対象になり得ます。まず自分の事業所の全職員を並べて、一人ずつ3要件で判断する――この作業を早めに済ませておくことをおすすめします。
その他の安全確保措置について(認定事業者向け指針の別紙)

⬆️チェック項目
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早期把握:日常的な観察を実施しているか。発達段階や特性・事業の特性に応じた定期的な面談またはアンケートを実施しているか。疑いを把握した場合の報告ルールを定め周知しているか
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相談体制:相談員の選任または相談窓口の設置と周知を行っているか。児童等および保護者に外部相談窓口を周知しているか
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研修:業務に従事する前に、座学及び演習を組み合わせる態様で研修を実施しているか。規則が定める研修事項を網羅しているか
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調査:疑いが生じた場合に調査を実施しているか。児童等の人権・特性に配慮しているか。疑われた従事者の人権にも配慮し、公正中立性を確保しているか。関係機関と連携しているか
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保護・支援:被害児童等と加害者の接触を回避しているか。支援機関の情報を提供しているか。被害児童等と保護者からの相談に誠実に対応しているか
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防止措置:早期把握や相談で得た情報について適切な事実確認を行った上で、「おそれ」の内容に応じた措置を講じているか
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対処規程:規程を遵守しているか。実質的な変更があった場合に届出をしているか
情報管理措置について
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管理責任者を置き、情報管理規程を遵守し、法定の期限までに廃棄・消去しているか
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規程を実質的に変更した場合に届出をしているか(施設等運営者がある場合はその合意も)
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法第12条が許容する6つの場合以外で目的外利用・提供をしていないか。秘密保持義務を守っているか
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漏えい時にこども家庭庁へ即時報告し、本人へ迅速に通知(5項目)し、二次被害防止措置を講じているか
違反した場合、何が起きるのか
ここは条文の言葉が並ぶと分かりにくいところですので、噛み砕いて整理します。
まず全体像として、行政の対応は「軽いものから順に」段階を踏む設計になっています。いきなり処分が飛んでくるわけではありません。
第1段階:指導等(お尻を叩かれる)
定期報告、漏えい等報告、報告徴収、立入検査などで気になる点が見つかると、まず指導が入ります。これは行政手続法上の「処分」ではなく、助言・指導のレベルです。ただし口頭で終わりではなく、文書で趣旨・内容・責任者が示され、期限を切って「どうしたか報告してください」と求められます。 ここで直せば話は終わります。
第2段階:公表(名前が出る)
ここから重くなります。ただし対象は限定されていて、犯罪事実確認をやるべきなのにやっていないと認められた場合です。この場合、こども家庭庁のウェブサイトに公表されます。
公表される内容は、事業者の名称、代表者名、住所、施設名と所在地、事業者の区分、違反した規定、違反の内容、そして対象となる教員等の数。つまり「何人分の確認をサボっていたか」まで出ます。保護者や利用者が検索して読める形で出る、ということです。
救いはあります。是正されれば公表は終了します。 永久に残る仕組みではありません。
第3段階:是正命令(従わないと罰則)
命令が出るのは、犯罪事実確認の記録をきちんと管理していない場合です。具体的には、①記録を適正に管理するために必要な措置を講じる義務に違反している場合、②漏えい等の報告が必要な事態が起きた際に、その管理義務に違反している場合。
ここでも手順が決まっています。まず是正の機会が与えられます(何がどう違反していて、何をすれば直るのかを示され、自主的な是正を促されます)→実施状況が確認され→それでも直っていなければ弁明の機会が与えられ(公益上緊急のときは省略されます)→命令が出ます。命令書には、処分日、理由、期限、報告義務、犯罪事実確認書の交付を止める条件、そして不服申立ての方法が書かれます。
命令に従わなければ罰則の対象です。また、報告徴収に期限内に応じない場合、立入検査を拒否した場合も罰則の対象になります。
認定事業者だけにある第4段階:認定の取消し
認定事業者には、さらに認定の取消しがあります。該当したら必ず取消しになる「必要的取消事由」と、行政の判断で取消しできる「裁量的取消事由」に分かれています。認定を失えば、認定事業者として掲げていた表示も使えなくなります。
整理すると、こうなります
事業者の立場から見て実務的に重要なのは、「何をやらかすと、どこまで行くのか」の対応関係です。

ここで気づいてほしいのは、研修や相談体制の不備は、直ちに公表や是正命令に直結する仕組みにはなっていないという点です。公表は犯罪事実確認義務の違反、是正命令は情報管理義務の違反に向けられています。
ただし、だから軽く見ていいという話ではありません。理由は三つあります。
第一に、安全確保措置の実施状況は定期報告で毎年報告する項目であり、そこから指導・報告徴収・立入検査のラインに乗ります。
第二に、義務事業者の安全確保措置は所轄庁が業法に基づいて監督します。つまり、こども家庭庁の公表・是正命令とは別に、業法上の改善指導や処分という経路が存在します。学校や保育所にとっては、こちらのほうがむしろ実効的です。
第三に、認定事業者の場合は、安全確保措置を含む三つすべてがこども家庭庁の監督下にあり、認定取消しの判断材料になります。
そして最後に、監督等の結果は「原則として毎年度1回」、その概況が公表されます。 個別の事業者名が出るかどうかは公表の枠組み次第ですが、年に一度、監督の全体像が世に出ることになります。何件の指導があり、どこが弱かったのか。業界としての通信簿が毎年出る、と考えておくのが現実的だと思います。
この指針をどう読むべきか
一言でまとめると、「望ましい」が「見られる」に変わったということだと思います。
たとえば研修について、これまでは手引きに「座学と演習を組み合わせて行います」と書かれていました。今回、それが監督等の観点に「座学及び演習を組み合わせる態様で研修を実施」しているかとして入りました。書いてある内容は同じでも、位置が変わると意味が変わります。
【改訂】横断指針とは何か、何が変わったか
位置づけ
正式名称は「教育・保育等を提供する事業者による児童対象性暴力等の防止等の取組を横断的に促進するための指針」。長いので「横断指針」と呼ばれています。
この文書の性格は、少し独特です。法の対象になる事業者だけでなく、業界を横断して自律的な取組を促すためのもので、法の義務の有無に関わらず読まれることを想定しています。そして今回の改訂方針では、「法の対象事業者が負う義務」はガイドラインにのみ記載し、横断指針には記載しないという整理が明示されました。
つまり横断指針は、義務のリストではなく、ガイドラインが求める安全確保措置について、詳細な留意点と具体例を示す文書として位置づけ直されたわけです。義務は書かないが、中身は最も詳しい。この関係を理解しておくと読み間違えにくくなります。
なぜ改訂したのか
理由は、率直に言えばメンテナンス不足でした。ガイドラインの策定後の議論で用語が更新されたのに、横断指針が追随していなかったのです。たとえば「認知のゆがみ」という表現が「認知の偏り」に修正されたのに、横断指針は古い表現のまま残っていました。
その結果、用語定義が一致しない、記載の詳細度が文書間で逆転する(本来詳しいはずの横断指針のほうが浅い)といった状態が生じ、資料の言葉を借りれば「事業者から見て自明ではなかった」わけです。今回はそれを揃えたうえで、必要な加筆を行った、という位置づけになります。
主な改訂点
用語・定義の統一
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「支配性・継続性・閉鎖性」の定義を具体化。継続性について「日常的、定期的、その他継続性をもって(不定期であっても反復継続が見込まれる場合など)」と明確化
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「性暴力」「不適切な行為」の定義をガイドラインと同一に統一
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「認知のゆがみ」→「認知の偏り」に修正し、加害者の個人要因に「自己中心的な考え」を追記
保護者への教育・啓発を充実
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「保護者説明会の際や日々の取組の中で、適切に周知・啓発を行うことが望ましい」
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「ルール作りの際に保護者にも意見を照会したり、定期的に周知したりすることが望ましい」
保護者を「説明する相手」から「ルールを一緒に作る相手」に近づける記述になっています。
うわさ・二次被害への警戒
「うわさが生じた場合には、当該児童等を大きく傷つけたり(二次被害)」「制度そのものが有効に機能しないおそれ」があるとして、保護者への丁寧な周知と協力の呼びかけが強調されました。情報管理の失敗が、制度への信頼そのものを壊すという危機感が出ています。
調査局面での外部連携を大幅に強化
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「適切な聴き取り、トラブル防止、証拠の保全等の観点から、弁護士等の専門家に相談して対応することも有効」
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「被害児童等への聴き取りを最低限にとどめ、関係機関や専門家と連携して対応することが望ましい場合がある」
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教員性暴力等防止法における警察への通報、児童福祉法等における行政機関への通告が法定されていることも踏まえて対応する旨を追記
ここは後半の論点に直結しますので、覚えておいてください。
中身の骨格
改訂版の構成は5章立てになっています。事業者が実務で参照するのはここですので、骨格だけ紹介しておきます。
第1章 趣旨等
教育・保育の現場が持つ支配性・継続性・閉鎖性という特徴。性暴力は刑法上の犯罪だけでなく「児童等を不快にさせる性的言動」を含むこと。接触型と非接触型(わいせつ言動、露出、盗撮など)。そして「不適切な行為」――性暴力には至らないものの、業務上必ずしも必要でなく、継続・発展すると性暴力につながり得る行為。この範囲は各事業者が業務の必要性を踏まえて自ら定義することが重要だとされています。
被害児童等の側の記述も厚くなっています。発達段階により被害と認識できない場合があること。男児が「男が被害を受けるはずがない」という思い込みから言えないこと。障害児が支援関係の崩れを恐れて言えないこと。そして相談・開示のプロセス――被害直後の開示は稀で、児童等は日常会話の中で「この人は批判せず受け止めてくれるか」を探り、一部分だけ話して反応を見て、安心が得られた時点で全容を話すという段階を踏むことが多い、という記述があります。
第2章 対応の全体像
「まさかそんなことが」という意識が発見を遅らせるので、どこでも起こり得るという前提を持つこと。事実確定を待たず疑いの段階から動くこと。1人で抱えず組織で対応すること。被害児童等の安全確保を最優先にすること。
第3章 未然防止
服務規律の整備と周知(採用決定前に書面交付と誓約書提出)、環境整備(死角のない環境、巡回、防犯カメラ)、児童等・保護者への教育・啓発。防犯カメラについては、設置場所、運用ルール、プライバシー配慮、1対1面談での録画・録音の扱い、トイレや更衣室は入口に設置して入退室のみ記録すること、保存期間は可能な限り長く――といった具体的な留意事項が並んでいます。
児童等への教育では、プライベートゾーン、境界線、そして「NO・GO・TELL」(嫌と言う/その場から離れる/誰かに話す)を教えることが挙げられています。
第4章 早期把握・相談
日常観察、相談体制の整備・周知、定期的な面談とアンケート、報告ルールと対応ルール。後半で扱う相談窓口の記述はここにあります。
第5章 相談・報告等を踏まえた対応
初期対応、保護者への連絡、安全確保、調査(体制、証拠保全、聴き取り、事実の評価)、対応方針の決定、保護・支援、再発防止、関係機関との連携。
「事実の有無の評価が難しい場合の対応」という項目が独立して置かれているのが目を引きます。客観証拠がない場合、当事者の陳述が食い違って事実確定が困難になることがあり、その場合の対応方針を事前に検討しておくことが重要だ、と書かれています。
【改正】施行ガイドラインの改正3点
ガイドラインは本年1月に策定・公表されましたが、「周知や運用の詳細の検討の中で、ガイドラインの記載を訂正する必要のある事項や、追加で示しておくべき事項が生じてきた」ため、改正されることになりました。改正は3点+技術的修正です。
① 研修の受講時期の考え方を明確化
これは実務がかなり楽になる改正です。従来、内定者や採用予定者の研修受講のタイミングが不明確で、「認定申請前に研修を完了することは不可能である」ケースが生じていました。
改正後は、**現に従事している者は認定申請前に、内定者等は「当該業務に従事させるまでの間に研修を受講させればよい」**と明確化されます。学校設置者等についても、施行日前後の内定関係が整理されます。
② 認定における事業者情報の公表項目の整理
児童自立生活援助事業、子育て短期支援事業、小規模住居型児童養育事業、妊産婦等生活援助事業、児童育成支援拠点事業について、公表項目を絞ることになりました。理由は「虐待被害を受けた子どもや家庭環境に課題を抱える子どもが生活する場等であり、入居者保護・安全確保・プライバシー保護の観点から」です。
具体的には、所在地は都道府県までの記載とし市区町村以下は記載しません。小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム)と子育て短期支援事業については、事業者名・代表者名・事業所名を「―」表記とします。民間教育事業(フリースクール、こども食堂、芸能指導など)でも、事業者からの相談により必要と判断した場合は非記載が可能になります。
③ 監督等指針(案)の検討に伴う改正
ガイドラインの「監督等の観点」と「定期報告事項」について、監督等指針の検討過程で適正化・具体化した事項を反映します。前述のとおり、ここが指針の別紙に移っていきます。
このほか、横断指針の改訂に伴うページ参照のずれを修正します。Q&Aについても「必要な対応を行うとともに、適宜問の追加等を行う予定」とされています。
【その他】システムと説明会
こまもろうシステムのマニュアル
「こまもろうシステム」は、こども性暴力防止法関連システムの通称です。犯罪事実確認、情報管理措置、定期報告などの手続を一元的に扱います。今回、マニュアルの素案が3種類示されました。義務事業者向け、認定事業者向け、そして従事者向け。「対象者が必要な情報のみを参照できるよう」分冊にした形で、従事者向けは最低限の情報に絞り、秋ごろ公表予定とされています。

⬆️こまもろうシステムのフロー
手続の流れはこうなります。事業者側は、GビズIDを取得してシステムのアカウントを登録し、事業者情報を登録、従事者情報をCSVで一括取込み、従事者にアカウント作成メールが自動配信され、職務情報を登録して犯罪事実確認書の交付を申請します。従事者側は、メール内のURLからアカウントを登録し、マイナンバーカードで認証、マイナポータルのアプリで戸籍情報を取得・登録します。
実務で引っかかりそうな点も書かれています。戸籍がデジタル化されていない場合は自治体窓口で紙の書類を取得する必要があること。従事者が「犯歴あり」との通知を受けた場合、通知から2週間以内に訂正請求ができること。離職や内定辞退の場合は中止要請で交付を停止できること。
定期報告の機能などは施行後に順次リリースされる予定で、マニュアルも施行時に更新版が出ます。
全国説明会は9月3日から
こども家庭庁による令和8年度の全国説明会が、9月3日から11月20日まで、全国12か所で開かれます。会場開催が11か所(京都、浜松、郡山、新潟、岡山、松山、福岡、名古屋、札幌、仙台、大阪)、東京はオンライン配信予定です。各会場100〜300名を想定しています。庁の職員が施行までに準備すべき内容を説明し、質疑応答の時間も設けられます。会場によっては、取組が進む事業者や有識者の登壇も検討中とのことです。
登録はほぼ終わりました
参考資料5によれば、学校設置者等からこども家庭庁への事業者情報の提出率は、8月20日時点の推計で99%。中央省庁・公立大学法人設立団体が5月末、都道府県教育委員会が6月末、都道府県が7月末という期限で進められてきました。
登録は終わりました。ここから先の、体制を作る局面が本番です。
事業者にとって大事な2点
ここまでが今回出てきた文書の解説です。ここから、事業者の実務に最も重く跳ね返る2点を取り上げます。相談窓口と研修です。どちらも「やったつもり」が通らない設計になっています。
ポイント① 第三者性のある相談窓口が求められている
義務の最低ラインはどこか
まず確認しておくと、義務としてのラインは意外に軽いものです。こども家庭庁のQ&A(5-3)はこう書いています。
内部の相談員の選任又は相談窓口の設置・周知と外部相談窓口の周知は両方必要です
監督等の観点も、「相談員の選任又は相談窓口の設置・周知」と「児童等及びその保護者への外部相談窓口の周知」の2点を並べています。つまり、内部に相談員か窓口を一つ置いて周知し、加えて外部の窓口を紹介する。これが最低ラインです。
外部窓口は既存の公的なものを紹介すれば足ります。準備ガイドは具体例として、24時間子供SOSダイヤル(文部科学省・0120-0-78310)、こどもの人権110番(法務省・0120-007-110)、Curetime(内閣府)を挙げています。公的機関の窓口を周知する場合、事前の承諾も要りません。
ここだけ読めば、「掲示物を作って配れば終わり」に見えます。
ところが、期待されている水準は別にあります
同じ日に改訂版が示された横断指針の第4章を読むと、話が変わってきます。
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複数の相談ルートを用意すること。児童等が相談先を自由に選べるように(担任、カウンセラー、相談窓口など)
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相談員の性別を選べることが有効であること。被害者の性別と加害者の性別の関係によって、相談する側の心理的障壁が変わるため
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面談・電話に加えて、手紙・メール等の文字による相談。「話すことが困難な児童等は文字による相談を選択できるようにする」
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匿名相談窓口
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学校心理士等の外部専門家への委託、児童相談所や法務局の人権相談といった外部機関の紹介
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事業所内の人間関係に縛られずに相談できるようにするための、第三者性の確保
義務は点で書かれていますが、期待は面で書かれています。そして監督の観点が「窓口を設置・周知しているか」を見るとき、その中身の妥当性は横断指針の水準に照らして評価されることになるでしょう。
なぜ「第三者性」がここまで強調されるのか
理由は、第1章の被害の特性の記述を読むとわかります。
児童等が被害を打ち明けられない理由として挙げられているのは、恐怖心や羞恥だけではありません。人間関係が壊れることへの恐れ、自責感、叱られることへの恐れ、そして「勇気を出して相談しても真摯に受け止めてもらえなかったり被害者が非難されたりすれば、さらに潜在化・長期化する」というリスクです。
障害児については、介助者が加害者である場合に支援関係の崩れを懸念して被害が潜在化すると書かれています。虐待等の圧倒的な支配下にある児童等については、加害者の報復や庇護の喪失への恐怖が強いとされています。
つまり、加害の可能性がある人物と同じ組織の中にある窓口は、構造的に相談しづらいのです。だから第三者性が要る。これは運用の工夫の話ではなく、被害の性質から導かれる設計要件です。
そして、これは一事業者では持ちにくい
ここが実務上の論点になります。相談窓口という機能は、事業者から見てコスト構造が最も不利な形をしています。理由は三つあります。
第一に、これは待機のコストです。
研修は一度やれば形が残り、防犯カメラは設置すれば動きます。ですが相談窓口は、相談が来ない期間もずっと開けておかなければ意味がありません。年間の相談件数がゼロでも、閉じていたら制度として成立しません。稼働率が読めない固定費であり、しかも「使われないこと」自体は悪いことでもない。規模が小さくなるほど、この固定費は重くのしかかります。
第二に、要件が掛け算になります。
横断指針が求めているのは単一の窓口ではなく、選択肢の束です。面談・電話・文字・匿名という相談方法の軸、内部・外部という設置主体の軸、相談員の性別を選べるという軸。掛け合わせると、相談員1人ではどうやっても満たせません。文字による相談ひとつを取っても、口頭相談とは別の受け手・別の運用・別の記録が必要になります。
そもそも、内部に第三者性を作れない事業者が現実に存在します。認定制度には従事者数の要件があり、この日の検討会では業界団体から「教育保育等従事者が3名未満の事業者は、安全基準を満たしていても人数要件により法の認定申請ができない」という指摘も出ていました。1〜2人で運営する事業所に「事業所内の人間関係に縛られない相談窓口」を内部で作れというのは、論理的に無理な要求です。
第三に、品質の要件が高いことです。
今回の改訂で、聴き取りに関する記述がはっきり厚くなりました。横断指針には**「記憶の汚染」**――繰り返しの聴取や誘導的な質問によって記憶が変容すること――が用語として定義され、被害児童等への聴き取りは最低限にとどめ、関係機関や専門家と連携することが望ましいとされました。「適切な聴き取り、トラブル防止、証拠の保全等の観点から、弁護士等の専門家に相談して対応することも有効」という記述も加わっています。
これは窓口の設計に直接跳ね返ります。訓練を受けていない担当者が最初の相談を受けると、二次被害が起きるだけではありません。誘導的な聴き方をした時点で、その後の事実認定そのものが壊れます。 横断指針は、客観証拠がない場合には当事者の陳述が食い違って事実確定が困難になると率直に書いています。最初の30分の質が、事案の帰趨を決めてしまうのです。
つまり「とりあえず窓口を置く」という対応は、リスクの低減ではなくリスクの移転になりかねません。相談窓口は、置けば済むものではなく、置き方を間違えると悪化するものです。
現実的な設計は「単独」ではなく「共同」
では、どうするか。ここで効いてくるのが、先に触れた外部相談窓口の周知が全事業者の義務であるという点です。
事業者ごとに窓口を作らせるより、自治体が域内共通の外部相談窓口を一つ用意すれば、域内のすべての事業者がそれを「周知先」として使えるわけです。コストも品質も、まとめたほうが有利になります。相談は待機コストですので、母数が大きいほど1事業者あたりの負担は下がり、専門性のある相談員を置ける可能性は上がります。業界団体単位でも同じことが言えます。
実際に、規模の大きい自治体では、こどもがチャットで相談できる窓口を教育委員会が域内共通で用意している例が既にあります。人口規模があれば単独で成立するわけです。逆に言えば、その規模から外れる自治体・事業者にとっては、共同化の設計を誰が主導するかが今後の論点になります。
ポイント② 動画を見るだけの研修ではダメ
「座学と演習」が要件になりました
もう一つ、現場の工数を確実に増やすのが研修です。こども家庭庁の研修実施の手引きは、この点をはっきり書いています。
座学と演習を組み合わせて行います。 座学と演習は、必ずしも同日に行う必要はありませんが、いずれも業務に従事する前に完了することが求められます
標準動画、要点動画及び研修資材には、演習用の課題・内容を含むため、動画視聴等を通じた個人単位の演習とすることも可能ですが、特に標準研修においては、可能な限り集団での演習を行い、対話等を通じて、気づきや考えを深めることが重要です
そして今回、監督等指針案の観点にも「座学及び演習を組み合わせる態様で研修を実施」しているかが入りました。演習をやったかどうかは、これから見られる項目になります。
研修の方法は3種類が用意されています。こども家庭庁の標準動画を使う標準研修(中長期で従事する者が想定対象)、最低限の内容に絞った要点動画による要点研修(不定期・短期間の従事者向け)、そして業界団体や事業者が独自に実施する独自研修。ただし独自研修も、規則が定める研修事項を満たす座学と演習が必須です。
演習の中身も指定されています
手引きは演習の目標を「こどもに接する具体的場面での適切な対応が、理解・イメージできるようになること」とし、必須の内容を二つ挙げています。
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不適切な行為の具体的な内容を理解させるもの
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疑いが生じた際に取るべき行動をシミュレートするもの――こどもや保護者から相談を受けたとき、他の従事者から相談を受けたとき
加害者が陥りやすい「認知の偏り」をシミュレートすることも挙げられています。具体例として示されているのは、「現場で適切か否かの判断が難しい『身体接触』の在り方について、現場の従事者が悩みや認識を共有しながら……個別具体的に考えていく」といった形です。
さらに手引きは、演習を成立させる条件にまで踏み込んでいます。
演習の効果を高めるためには心理的安全性を確保することが重要です
具体策として、演習の冒頭で「ここは評価の場ではない」「発言内容で不利益は生じない」と明確に伝えること、アイスブレイクの時間を取ることが挙げられています。オンラインで行う場合は、3〜5人程度の少人数グループに分け、進行・記録・時間管理の役割を分担するように、とまで書かれています。
これは要するに、ファシリテーションの業務です。動画の配信でも、受講管理でもありません。誰かが場を持ち、身体接触の是非のような答えの出しにくい話題を扱い、参加者が正直に話せる状態を作らなければならない。しかも、参加者の中に将来の加害者がいるかもしれないという前提を、口に出さずに扱う場です。簡単な仕事ではありません。
現場で詰む、五つのポイント
手引きとQ&Aを読み合わせると、実務が破綻しやすい箇所がかなり具体的に見えてきます。
1. 対象者が広いこと。
前半で触れた「教員等」の範囲がそのまま研修の対象になります。事務職員、用務員、一人で送迎するバスの運転手、継続性のある短期アルバイトやボランティア、オンライン指導の担当者、派遣労働者。研修は先生だけに受けさせるものではありません。 人数を数え直すと、想定していた規模の1.5倍になる事業者は珍しくないはずです。
2. 他の事業者で受講済みでも、もう一度受けさせる必要があること。
Q&Aは「他の事業者の下で研修を受講していても改めて研修を受講させる必要があります」と明記しています。研修義務は事業者ごとに独立しているのです。掛け持ちの講師や非常勤が多い業界では、実施回数がそのまま膨らみます。
3. 「従事前に完了」が、年1回の集合研修という設計を壊すこと。
今回のガイドライン改正で内定者の扱いは明確化され、「当該業務に従事させるまでの間に受講させればよい」となりました。ですが逆に言えば、期中採用が入るたびに座学と演習を回さなければなりません。 年度初めに一度やって終わり、では成立しないわけです。
4. シフト勤務との相性が悪いこと。
手引き自身が「交代制勤務などで一度に全員が集まることが難しい場合は、複数回の開催を検討することも有効です」と認めています。複数回開催は、そのままファシリテーターの工数×回数です。日々のミーティングへの組み込みや30分以内の隙間時間の活用も提案されていますが、それは負担が消えたのではなく、分散して常態化したということだと思います。
5. 実施したあとにも仕事が残ること。
受講管理表による記録(別紙様式2が用意されています)、理解度テストや受講者アンケートによる効果測定、そしてこども家庭庁への定期報告での研修受講状況の報告。さらに手引きは、演習で議論された内容を集約し「組織のルール・体制・環境整備などに反映させることが必要」とまで書いています。研修は行事ではなく、組織を書き換えるための入力として位置づけられているわけです。
国も「内製しろ」とは言っていません
救いもあります。手引きは、研修を事業者自身が実施する必要はなく、外部の研修を受講させてもよいと明示しています。業界団体が実施する研修の活用、複数の業界団体による合同開催、虐待対応などの既存研修との組み合わせも挙げられています。教育職員や保育士向けに既に提供されている研修があれば、それを受講させることで義務の一部を果たせるとも書かれています。
体制の作り方も例示されています。小規模事業者は事業所ごとに研修担当者を配置、大規模事業者は本部に研修統括責任者を置き各施設に研修連絡担当者を置く二層構造。同一事業者内に複数の施設がある場合は、本社・支社・各施設のいずれで実施しても構いません。
そして、こう書かれています。
第三者性の確保の観点から、専門的な知見を有する外部有識者等による講義や研修教材の監修を受けることも検討しましょう
国の側も、この専門性を各事業者が内製できるとは想定していないわけです。「動画を見るだけではダメ」ですが、「全部自分でやれ」とも言っていない。 ここが実務設計の余地になります。
これから4か月で決めるべきこと
最後に、順序の話をしたいと思います。
まず、実務の締切を11月末に置くこと。 12月25日は施行日であって、準備の締切ではありません。現職者の研修完了を11月中と設定している自治体も既にあります。年末に駆け込むのは、この種の体制整備では最も危ないやり方です。
次に、「書類で済むこと」と「済まないこと」を分けること。
情報管理規程(取扱い方法に応じた3種類のひな型が用意されています)、報告ルールと対応ルール、外部窓口(24時間子供SOSダイヤル、こどもの人権110番など)の周知資料。ここはひな型が使えますので、9月中に片づけてしまうのが得だと思います。時間をかけるところではありません。
そのうえで、書類では済まない一点があります。内部の相談窓口を「誰が、どう受けるのか」です。
ここを名前だけ決めて終わりにすると、二つのことが起きます。一つは、相談が来ないこと。 前半で見たとおり、児童等が言えない理由の中心は「人間関係が壊れることへの恐れ」であり、加害の可能性がある人物と同じ組織の中の窓口は構造的に選ばれません。窓口を設置して周知した、という事実は残りますが、機能はしません。
もう一つは、来たときに事故ること。 訓練を受けていない担当者が誘導的に聴いてしまえば、二次被害が生じるうえに、その後の事実認定まで壊れます。
つまり、法令上の最低ラインを満たすことと、事案が起きたときに自分たちを守れることは別です。前者は書類で足りますが、後者は足りません。監督等の観点は前者を見に来ますが、実際に事故が起きたときに問われるのは後者です。ここを混同したまま12月を迎えるのが、いちばん危ういパターンだと思います。
並行して、研修を「期中採用が入っても回る形」で設計すること。 年1回の行事ではなく、随時起動できる仕組みとして。座学は動画で、演習は少人数で、記録は自動で残る形が理想です。ここが最も設計の差が出るところだと思います。
そして、多様な相談ルートは共同で積み上げること。 匿名、文字、性別の選択、第三者性。単独で全部やろうとすると、たいていの事業者は途中で止まります。自治体単位・業界団体単位・法人本部単位のどれで持つかを、今のうちに決めておきたいところです。
順序を逆にして、いきなり理想形を自前で作ろうとすると止まります。止まったまま12月25日を迎えるのが、いま一番避けたい事態です。
9月3日から始まる全国説明会は、質疑応答の時間も設けられています。迷っている点があれば、そこで直接聞くのがいちばん早いと思います。
なお、私たちつながりAI株式会社は、AIパートナーと専門職相談員を組み合わせた相談サービスを自治体向けに提供しており、文字による相談・匿名での相談・24時間の受け付けといった、この記事で「一事業者では持ちにくい」と書いた部分を、自治体単位・広域単位で共同利用できる形にすることを仕事にしています。相談記録の構造化や、随時発生する研修を支える仕組みも同じ文脈にあります。関心を持たれた自治体・事業者の方は、お気軽にご連絡ください。
出典
こども性暴力防止法施行準備検討会(第13回)/2026年8月25日・こども家庭庁
会議ページ(配布資料一覧)
https://www.cfa.go.jp/councils/koseibo-jumbi/4cef2a90
資料3 こども性暴力防止法監督等指針(案)について
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/4cef2a90-9689-43d9-868d-ab445acdbce1/76262f1f/20260824_councils_koseibo-jumbi_4cef2a90_04.pdf
資料4-1 こども性暴力防止法監督等指針(案)_義務事業者
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/4cef2a90-9689-43d9-868d-ab445acdbce1/438f9638/20260824_councils_koseibo-jumbi_4cef2a90_05.pdf
資料4-2 こども性暴力防止法監督等指針(案)_認定事業者
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/4cef2a90-9689-43d9-868d-ab445acdbce1/37e4c250/20260824_councils_koseibo-jumbi_4cef2a90_06.pdf
資料5 こども性暴力防止法施行ガイドラインの改正について
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/4cef2a90-9689-43d9-868d-ab445acdbce1/57b1c846/20260824_councils_koseibo-jumbi_4cef2a90_07.pdf
資料6 こども性暴力防止法施行ガイドライン(案)
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/4cef2a90-9689-43d9-868d-ab445acdbce1/63bc2e7d/20260824_councils_koseibo-jumbi_4cef2a90_08.pdf
資料7 こまもろうシステムマニュアルについて
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/4cef2a90-9689-43d9-868d-ab445acdbce1/48f493d0/20260824_councils_koseibo-jumbi_4cef2a90_09.pdf
資料8-1 義務事業者向けマニュアル(素案)
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/4cef2a90-9689-43d9-868d-ab445acdbce1/f395c712/20260824_councils_koseibo-jumbi_4cef2a90_10.pdf
資料8-2 認定事業者向けマニュアル(素案)
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/4cef2a90-9689-43d9-868d-ab445acdbce1/26169b9e/20260824_councils_koseibo-jumbi_4cef2a90_11.pdf
資料8-3 従事者向けマニュアル(素案)
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/4cef2a90-9689-43d9-868d-ab445acdbce1/6f49120d/20260824_councils_koseibo-jumbi_4cef2a90_12.pdf
資料10-2 横断指針 参考資料 改訂版
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/4cef2a90-9689-43d9-868d-ab445acdbce1/71cd1303/20260824_councils_koseibo-jumbi_4cef2a90_15.pdf
参考資料2 義務事業者用準備ガイド(Ver.1.1)
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/4cef2a90-9689-43d9-868d-ab445acdbce1/2edfecee/20260825_councils_koseibo-jumbi_4cef2a90_27.pdf
参考資料4 令和8年度全国説明会の開催について
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/4cef2a90-9689-43d9-868d-ab445acdbce1/35795692/20260824_councils_koseibo-jumbi_4cef2a90_20.pdf
参考資料5 事業者アカウントまとめ登録の状況
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/4cef2a90-9689-43d9-868d-ab445acdbce1/ac6fa918/20260824_councils_koseibo-jumbi_4cef2a90_21.pdf
その他の関連資料(こども家庭庁)
こども性暴力防止法に基づく研修の実施に関する手引き
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/fa291380-2996-450c-a3dd-6acf7f58fd3b/2b64a4d9/20260415_policies_child-safety_efforts_koseibouhou_jigyousya_08.pdf
こども性暴力防止法に関するQ&A(令和8年4月)
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/80127231-8582-476e-a6e7-9347e725ed96/f490c24f/20260422_policies_child-safety_efforts_koseibouhou_49.pdf
こども性暴力防止法(制度の総合ページ)
https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/efforts/koseibouhou
こども性暴力防止法に関する解説動画・資料(事業者向け)
https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/efforts/koseibouhou/jigyousya
こども性暴力防止法に基づく従事者向け研修教材
https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/efforts/koseibouhou/jujisya