駒崎 弘樹 公式ブログ 提言・解説・アイディア

心中を改名!グッジョブこども家庭庁。そして他に変えるべき用語たち

これは、本当に良い変更だと思います。

こども家庭庁の専門委員会が、子どもの虐待死を検証する際に使ってきた「心中による虐待死」という分類名を、「保護者の自殺を伴うこどもの虐待死」に変更しました。

 

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こども家庭庁「こども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第22次報告)の概要」より

 

「心中」という言葉には、一緒に死ぬことを選んだかのような響きがあります。

でも、子どもは一緒に死ぬことを選んだのでしょうか。

親がどれほど追い詰められていたとしても、子どもには、その子自身の人生がある。親と運命をともにしなければならない存在ではありません。

今回の資料にも、「こどもは保護者の所有物ではなく、権利の主体である」と明記されています。

親の苦しさに目を向け、追い詰められる前に支えることは、もちろん必要です。同時に、子どもの命が奪われたという事実を曖昧にしてはいけない。

その両方を大切にする名称変更だと思います。グッジョブ、こども家庭庁。

そして、こうした言葉は、まだまだあると思うのです。

被害を軽く見せたり、加害を美化したり、被害者にも責任があるように聞こえたりする言葉が。

例えば、こんなものです。

 

①「痴漢」→「同意なく身体を触る性暴力」

「痴漢に遭った」と「同意なく身体を触られる性暴力を受けた」では、伝わる深刻さが違います。

触る行為については「接触型性暴力」と呼ぶことも考えられる。「痴漢」という聞き慣れた言葉で、その被害を小さく扱っていないか、問い直したいです。

 

②「小さい子にいたずらする」→「子どもに性暴力をふるう」

これは、特に変えたい。

「いたずら」は、落書きや軽い悪ふざけにも使う言葉です。子どもへの性暴力を、同じ言葉で表していいのでしょうか。

「いたずらをした」とぼかさず、「子どもに性暴力をふるった」と書く。何が起きたのか、誰が加害したのかを、きちんと伝えるべきです。

 

③「いじめ」→起きている加害行為を具体的に書く

「いじめ」の一言で、殴る、金銭を要求する、集団で無視する、性的な画像を拡散するといった行為が、ひとまとめにされています。

集団による無視や人格否定なら、「集団的な心理的虐待」と表した方が、実態が伝わる場合もあるでしょう。

ただ、一対一の加害も、身体的・性的な暴力もある。だからこそ、「いじめがありました」で済ませず、何をしたのか、何をされたのかを具体的に書いてほしい。

 

④「児童買春」「援助交際」「未成年のパパ活」→「子どもへの性的搾取」

性的搾取の実態があるのに、「交際」や「パパ活」と呼ぶと、対等な関係や、子どもが選んだ稼ぎ方のように聞こえてしまいます。

大人が子どもの困窮や孤立につけ込み、性的に利用している。その加害が見える言葉にしたいです。

 

⑤「リベンジポルノ」→「性的画像の同意のない拡散・公開」

「リベンジ」は「仕返し」です。

でも、被害者は仕返しされるようなことをしたのでしょうか。別れを告げたり、要求を断ったりすることは、落ち度ではありません。

そもそも、画像を拡散する目的が報復とは限らない。問題の核心は、本人の同意なく性的な画像を広めることです。

 

⑥「体罰」「愛の鞭」→「しつけ・指導を名目とした暴力」

「愛の鞭」と言われると、暴力が子どものための行為に見えてしまう。

でも、「愛している」「成長してほしい」という加害する側の説明で、殴られる痛みや恐怖が消えるわけではありません。

しつけや指導という言葉が、暴力を正当化するために使われていないか。そこを問いたいです。

 

⑦「家庭内のもめごと」「夫婦げんか」→「配偶者への暴力・威圧・支配」

もちろん、すべての夫婦げんかが暴力というわけではありません。

ただ、一方が相手を殴ったり、脅したり、行動やお金を支配したりしているなら、「夫婦げんか」で片づけてはいけない。

双方に責任がある争いのように表現することで、一方的な加害が見えなくなってしまいます。

 

⑧「痴情のもつれ」→「交際相手・元交際相手による暴力・殺人」

「痴情のもつれ」という言葉は、暴力や殺人を、恋愛の悲劇のように見せてしまいます。

誰かと付き合ったことも、別れを選んだことも、暴力を受ける理由にはならない。加害行為を、恋愛感情で包んで語る必要はないと思います。

言葉だけで、被害をなくせるわけではありません。

でも、何と呼ぶかによって、周囲が「よくあること」と流すのか、「介入すべき加害だ」と受け止めるのかは変わります。

その言葉は、加害する側にとって都合のいい言葉になっていないか。被害を受けた人の痛みを、小さく扱っていないか。

今回の「心中」の改称をきっかけに、私たちが何気なく使っている言葉も、見直していきたいです。

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