駒崎 弘樹 公式ブログ 旧ブログ記事

ソフトバンクの静かな革命


2011年は寄付元年になります。理由のひとつは改正寄付税制の成立。もう一つは、ソフトバンクの始めた「あるサービス」です。


僕も微力ながら尽力した改正寄付税制については、ここでは多く語りません。拙著「社会を変えるお金の使い方」か、NPO法人シーズのWEBを見て頂けたらと思います。これでようやく欧米並みの寄付税制を得ました。
二つ目については、多くの人がまだその意義について気づいてはいません。NPO関係者でさえも、です。しかし僕はこのサービスは、後にダムを決壊させる「蟻の一穴」の役目を担ったと言い切ることができます。
それが、ソフトバンク社が先日来行なっている、「チャリティホワイト」「NPO団体への支援金」です。
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え、聞いたこともない?そうかも知れません。iPhoneユーザーである僕ですら、普段生きていく中では目にしない内容です。そこでiPhoneユーザーであるというだけの僕が、熱くこのサービスについて勝手に語りたいと思います。
まず、「チャリティホワイト」から。これは毎月10円を電話代と一緒に寄付でき、それにソフトバンクが10円上乗せしてくれて、計20円が被災地で頑張っているNPOに継続的に行くよ、というサービス。
そして若干地味な(だけど中身はすごい)名称の「NPO団体への支援金」。こちらは、ヤフーの復興応援サイトから行って、好きなNPOに好きな額をワンショット寄付できる、というもの。寄付額は携帯料金と一緒に引き落とし。
これの何がすごいの?と思われるでしょう。答えは「携帯で寄付が継続的にできるようになる」という可能性を提示したことです。
実はこれまで携帯から寄付は「基本的には」できませんでした。
i-modeで着メロは買えても、寄付はできなかったのです。(買った着メロの一部が寄付になる、とか壁紙を買ってそれが寄付になる、など変則的なものはできましたが、もろ寄付ど真ん中、というのは認められていませんでした。)
実際にある寄付支援NPOの代表が、某携帯電話キャリアに提案に行ったところ、いろいろな内部の理由があり、寄付を認めることができない、というお答えを頂きました。
携帯から寄付できるようになったのが新しいことだと分かったけど、それがどうスゴイのさヽ〔゜Д゜〕丿 と思われる方もいるでしょう。いや、これは超スゴイのです。
皆さん、例えば毎月300円等の少額をどこかのお店に払うような場合、どうやっていますか?直にその店に行く?いや、面倒くさいですよね。忘れちゃうし。方法は主に2つ。クレジットカード引き落としか、銀行引き落とし。でもクレジットカード引き落としは、クレジットカード番号とかWEBで入力しないといけないし、銀行引き落としは口座振込用紙に実印押したりなんだりしなくちゃいけない。つまり、結構大変なんです。
翻って携帯。着メロやら着エロやら星占いやらに、皆さん月額300円を気軽に払っているのではないでしょうか?なぜ?それはワンクリックですぐに登録でき、月々の支払も電話料金と一緒に簡単に引き落とされるから。
そうです。携帯課金は、こうした優れた少額決済のプラットフォームとなっており、その利便性は唯一にして最強のものと言っていいでしょう。
さて、話をNPOに戻しましょう。もし携帯からNPOに毎月300円寄付できる世界になったら、何が起きるでしょうか?
例えばこういうシーンが考えられます。

例1)
あなたは河原をジョギングしていた。いつも気持よく走る場所に、今日は同じ色のTシャツを着ている人たちが、パンを挟む器具のようなものでペットボトルを拾っているのが見えます。気になって声をかけると、彼らは定期的に河原を清掃するNPOだと言います。そうか、自分が気持ちよくジョギングできるのも、彼らのお陰だったんだ。あなたは感謝しますが、一緒に清掃できる時間はありません。ふと手渡されたNPOのチラシを見ると、「携帯ヤフーからNPO→地域→●●(NPOの名前)に行って、クリック!」と書かれています。早速携帯を取り出し、登録してみました。毎月300円で綺麗な河原でジョギングできると思うと、安いものだ、とあなたは思い、また走り出しました。

例2
最近わが町も治安が悪くなってきたようだ。娘が変質者に何度も声をかけられた。自分たちで何かできることがないか、と思い、パパ仲間で会社が終わったら近所の見回りをしよう、ということになった。最近お腹が気になってきたので、ウォーキングによるダイエット効果も狙っている。しかし見回り後の皆での乾杯がそれを帳消しにしてしまうが。
こうした近所づきあいも兼ねたパパの見回りだが、そのうち人数も増えてきた。お揃いのTシャツを買ったり、ホームページを作ったりしていたら、経費もかさんできた。
会費制にしたいが、徴収が面倒だ。
そんな時に携帯から毎月寄付できるページを見つけた。ここに登録すれば、携帯料金と一緒に引き落とされるから、とても便利だ。私たち見回りチームに、毎月200円寄付してくれる人が、私たちメンバーと近所のサポーター(パパの妻、つまりママたちだ)合わせて50人もいれば、会としては十分成り立つ。
これで娘たちが安心して歩ける町を創れるぞ。

例3
被災地で心に傷を負った人たち向けに、精神科医である私はカンセリングを提供したい。行政もなかなか手が回っていないようだ。しかし現地に住み込みでやっていくには、資金も足りない。有名な団体なわけではないので、寄付も集まりにくい。どうしよう。
そうだ。この携帯サービスで、毎月1000円を医局や医学部の友人たちに寄付してもらえれば、滞在費くらいはまかなえる。よし、被災地に行こう!

と、こんなような活用方法がいくらでも考えられるのです。
これまで日本では、寄付をしたいというニーズは、携帯電話キャリアからしてみたら無視しても問題ない規模でした。わざわざ対応しなくても、携帯電話キャリアへの登録数が減るわけではありません。それよりも、デザインやらアプリやらデコメやらの方が重要だったので、積極的に寄付のプラットフォームを創ろう、というところまでは行かなかったのです。
しかし、この「伝統」をソフトバンクが破ってくれました。今後、ソフトバンクが「チャリティホワイト」「NPO支援寄付」を発展させ、「自分の寄付したい団体に継続的に少額寄付できる仕組み」にまで昇華いただけることを、願っています。
そして他のキャリアもソフトバンクを見習って、携帯から寄付できる仕組みに前向きに取り組んでもらいたいと思います。
政府が税制改正という大岩を動かしたのです。次は民間がそれに続く番です。政府に社会問題の解決をお任せして文句だけ言うのではない「新しい公共」とは、つまりそういうことではないでしょうか。



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当記事はNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹の個人的な著述です。
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