駒崎 弘樹 公式ブログ 旧ブログ記事

【書評】なぜこの国の学力は世界一なのか?


ある小国が学力世界一ということで注目を集めています。


それは・・・どこでしょう?
そう、フィンランドですね。
フィンランド、フィンランド、うーん、フィンランドってどこよ、と普通の人はなるかも知れません。日本では「ムーミン」の作者が生まれた国、つまりムーミンの故郷、ということでちょっと知られている、というくらいでしょうか。
このフィンランドは、経済協力開発機構(OECD)が世界の15歳児を対象に2000年から3年ごとにやっている学力到達度調査(PISA)で2000年と2003年と2回連続で世界一と評価されました。
気になる、どうやって??というところが、この本に書いてあります。

どうやって、のところは本書にゆずるとして、僕が感動したのが、フィンランドのこの教育改革を成し遂げたのが、若干29歳で教育大臣(日本で言ったら文部科学大臣)に就任したオッリペッカ・ヘイノネン氏だったこと。
29歳で大臣になる、ってどういうこと?と思ったが、その時の首相のアボ氏も35歳だったから更に驚き。
フィンランドすごいな、と思ったのだが、実は1990年当時フィンランド経済は壊滅的で、失業率20%の状態だったと言います。(日本は不景気な10年2月現在でさえ4.9%
そんな未曾有の国難の時期に、フィンランド国民は優秀な若手に国運を任せたのでした。そして若干29歳のヘイノネン大臣は「教育こそ未来の投資だ」ということで、フィンランドの教育改革を始めたのでした。
小国フィンランドの資源は人だ。人に投資し、彼らが産業を興し、そして経済を興隆させるのだ、と。その後携帯電話トップシェアのノキアを初めとしたIT産業の急成長で経済も回復していったのでした。
どんな改革だったんだろう。たくさんのお金をぶっこんでエリート教育でもしたのかな、と思ったら、その真逆。
「落ちこぼれを出さない」という平等の教育を徹底させたのでした。
そのために学校は少人数制を取り、しかも教師には修士号を義務付けました。
中央からの学習指導要領は3分の1に減らし、各校の自主性に任せることにしたのです。
(その他注目すべきフィンランドの社会インフラなどあるのですが、そこら辺は是非本書をご覧ください。)
ここで皆さんお気づきでしょうが、日本は逆を行っていますね。「ゆとり教育」バッシング、ということで授業時間数を増やし、従来型の詰め込みに逆戻りしていこうとしています。
ちなみに日本とフィンランドの授業時間数の差ですが
 ◆年間平均標準授業時間の比較
         日本   フィンランド
 7~8歳   709時間  530時間
 9~11   761    673
 12~14  875    815
(注)「図表でみる教育 OECDインディケータ(2004年版)」から。このデータは02年現在
ということで、フィンランドの方が少ないんですね。
授業時間数を増やすことと学力、どう繋がるのか、という検証のないまま、文部科学行政が進んでいっていたのでははないでしょうか。
しかし一つの救いは「高校無償化」の流れ。
これはフィンランドと同様の「教育の平等化」に資する政策です。そしてそれは底上げ効果によって全体学力の向上に資するでしょう。しかし悲しむべきかな、高校無償化も子ども手当同様にバラマキの非難を浴びています。
しかしそうでしょうか?ちなみに教育に力を入れているフィンランド(もちろん高校は無償。大学すら無償)は教育にばら撒いている、ということになりますが、彼らと我々の競争力を比較してみましょう。
IMD世界国別競争力ランキング 2002
国際競争力ランキング.gif
はい、もうお分かりですね。バラマキと投資の違いは、それが国民の幸福と経済の成長に繋がるか否かによって判断されるべきでしょう。とするならば、教育にお金をかけることは、バラマキではないのです。
というわけで、先日話した「保育は費用でなく投資です」に引き続き、もちろん「教育は明日への投資です」ということになるのでした。
以上!

「わたしたちは教育の機会の平等がなければ、教育の質の向上は不可能だと考えています。平等を保障する制度は、フィンランドの教育制度の礎となるもっとも大切な原則です。質と機会の平等は矛盾するものではなく、片方が片方を可能にするものなのです」 -オッリペッカ・ヘイノネン

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