駒崎 弘樹 公式ブログ 旧ブログ記事

待機児童問題解決の処方箋「おうち保育園」スタート

なぜ病児保育保育のフローレンスが、待機児童問題解決に
乗り出したか。

それは、弊社の社員が育休から復帰しようとした時に、お子さんが待機児童に
なってしまったことがきっかけでした。
彼女は大変優秀な社員で、戻ってきてくれることを、今か今かと待ち続けていました。順調に行けば●月になったら帰ってこれて、そうしたら人材配置はこうして、こういう事業を任せて、、、と経営者である僕は指折り数えていたのでした。
だがしかし、彼女から「保育園が決まらないので、戻れません」という悲痛な電話が来たのです。頭の中で考えていた人材配置や事業計画は白紙に戻りました。社員70人と人数が少ない零細NPOでは、一人一人がとっても大事。あてにしていた社員が一人いなくなるだけで、経営の選択肢自体が奪われてしまうことだってあります。
僕は怒りました。彼女に対して、ではなく、社会に。
待機児童問題って随分前から言われてたけど、まだ引っ張ってんのかい!と。
誰か何とかしないのかよ、と。
そこで、そもそも何で保育園が足らないわけ?というのを調べてみたわけです。
そうすると、この古い業界の古い仕組みが制度疲労を起こし、待機児童を量産していたのが分かりました。
とても簡単に言うと、こういうことです。僕たちが普通に保育園と言っているものは、国が定めた法律に沿って、自治体が直接運営したり、誰かに委託してやってもらっている「認可保育園」を指します。
「認可保育園」は保育園はこうやって作ってね、という基準に基づいてだいたい60人~100人くらいを収容するのが一般的です。広い園庭も必要なので、そうすると、90坪くらいは必要なんですね。広い敷地に立派な施設。たくさんの子どもたちを収容できるので、効率的です。
昔はそれでも良かったんですが、日本は焼け野原から復興し、都会には大きなビルがわんさか建てられるようになりました。そうすると認可保育園が建てられる場所は少なくなっていき、預けられなくなってきました。そこで東京都は国とは別に、都が認証する「認証保育園」を作って、国と同様に(でも国よりは少ないお金で)事業者に委託して、保育園をやってもらうようになってきました。
認証保育所は30人くらいから作れるので、広さはだいたい120平米~くらいで良いわけで、認可よりは簡単に作れますが、それでも保育園に用途変更できるような物件も、そんなにたくさんあるわけではありません。
都心の待機児童密集地帯に作りたくとも、作れない、という状態なわけですね。
※それに加えて、以前エントリーで書いた「新規参入を阻む闇」の問題が絡み、新規参入が阻まれていたりして、二重三重で動きが取れなくなっているのです。
さて、じゃあ外国ではどうしているんだろうか、というのを調べてみたところ、何とフランスでは「認定保育ママ」という頼りになるおっかさん達が34万人もいて、自分の家で子どもたちをみているわけです。フランス国内の保育需要の7割を、この認定保育ママ達がカバーしています。
じゃあ日本もやれば良いじゃないか!と思ったところ、日本でもこの「保育ママ」制度はあることはあるのですが、その数なんと993人。(07年度)
フランスの300分の1程度しかいないわけです。
何で?と不思議に思いました。普通の家庭で預かれる家庭保育が、施設保育と同じように育っていけば、待機児童問題解消に貢献できるのに、何で日本だとこんなにマイナーなの?と。
そこで弊社のこどもレスキュー隊員(病児保育スタッフ)で、25年間も世田谷で保育ママをやり続けていたKさんに聞いてみました。
彼女いわく「いやあ、一人で三人を預かるので、自分が休んだらお母さんが困っちゃいますでしょ。だから25年間一度も休まず頑張りましたよ。うふふふふ。」
僕は驚きました。Kさんみたいな良い人でかつ桁はずれに健康じゃないと、こりゃできんわ、と。
日本では欧米のように気軽に家族を理由に会社を休める環境にありません。なので保育ママの方にかかる責任は、海外の比ではなくなるわけです。
更には住環境も海外ほど広いわけではないので、自然と家族も巻き込むことになり、家族の反対等にも会いやすくなります。かくして保育ママのハードルはあがり、担い手不足になり、そしてインフラにはなりえない、とこういうわけなんですね。
さてここで僕たちは考えました。ならばこうしたらどうだろうか。
①保育ママは1人で複数人の子を保育するのではなく、
「何人か」で複数人の子を保育する少人数グループ保育にしたらどうだろうか。
②更に一人が例えば風邪をひいてしまっても、代替要員を派遣できるように、事業者が保育ママを雇用する形態にしてはどうだろうか。(それまでは行政と保育ママ個人の相対契約。)
③従来の「自分の家で預かる」やり方ではなく、色んなところにある空き家、空きスペースをミニ保育園化したらどうだろうか。
こうして生まれたのが「おうち保育園」です。
http://www.ouchi-hoikuen.jp/
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東京都で待機児童急増地帯といえば、我が故郷江東区。
江東区で最も待機児童が多い豊洲エリア。
ここでUR都市機構様が協力して下さり、東雲キャナルコートというマンションの空き物件一部屋をお借りすることができました。
この広さ80平米のお部屋で9人の1歳から2歳のお子様を、保育者3人、補助者1人、栄養士1人でお預かりするのです。
こども9人に大人5人という超がつくほど手厚い人材配置で、保育の高い質も実現できます。
総務省統計によると全国5700万戸の住宅のうち、なんと13%(757万戸)もが空き家となっているそうです。待機児童を吸収するに十分な量の空き家は既に揃っているのです。後は当モデルが、認可保育園と同様にきちんと公的資金が入り、あらゆる所得階層の方々が安心して預けられるような形の「制度」になっていけば良いのです。
この「おうち保育園」モデルを成功させることで、待機児童に悩む都市部に置いて有効なモデルを提供できるようになるのです。そして「子育てと仕事の両立なんて当たり前」な社会の実現に、一歩も二歩も近づいて行くのです。
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なお、当事業は松井内閣官房副長官を始めとした官邸スタッフの皆さんの御理解の基に、厚労省保育課の心ある職員の方が「NPO法人等を活用した家庭的保育の試行的事業」の名で政策事業化してくださり、江東区副区長や江東区保育課の皆さんが公的事業として取り組んで下さったお陰で世に生まれたことを、感謝の気持ちと共に記しておきたいと思います。かの皆様のどなたが欠けても、存在しえない事業でありました。
更には民主党、自民党、みんなの党、公明党など超党派の衆議院議員、区議会議員の諸先生方の温かな理解と待機児童問題への危機感が、おうち保育園モデルの誕生を後押ししたことも、忘れることはできません。
フローレンスは今後も、一刻も早く待機児童問題を終結させるべく、おうち保育園モデルを広げ、そして制度化へ向けて政治に提言を繰り返していきたいと思います。
おうち保育園に入園して下さった9家庭のうち2家庭が「4月1日に保育園が決まってなかったら、解雇される予定です。」と仰っていました。
そんな馬鹿げた社会を、いつまでも許して良いはずがないのですから。
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当記事はNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹の個人的な著述です。
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