駒崎 弘樹 公式ブログ 旧ブログ記事

真の「新しい公共」を、税金を1円も使わずに実現する方法


寄付税制改革が「後は通常国会を通るだけ」になった今、次に我々が仕掛けなければならないことは、何か。


私は「社会的金融プラットフォーム」の構築だと思います。
現在NPOや社会的企業は、金融機関からお金を借りるのが大変難しい状況です。
また、低所得者層へのマイクロファイナンス等は当局の規制がかかっているのはもちろんですが、
その元手となる資金を大手銀行から借りることができないのです。
どういうことか。アメリカを引き合いに出しましょう。アメリカでは「地域再投資法」(CRA)というものがあり、大手銀行が地元のスモールビジネスやNPOに一定程度の割合で貸し出すことを義務付けています。
そこで銀行は渋々だったり、あるいは新たなチャンスとして、低所得エリアに貸出先を見つけようとするのですが、大手銀行にそうした小口金融のノウハウはありません。
そこで、銀行はCDFI(Community Development Finance Institution:地域開発金融機関)に低利子で貸し出し、CDFIが銀行に代わって、低所得者層や貧困エリアでの起業に貸し出しを行うのです。
CDFIは一般名詞で、CDFIを買って出るNPOや企業が手をあげて認定CDFIになり、地元に密着した、かつ金融の恩恵を受けづらい層への貸し出しを行っていくのです。
CDFIから貸し出しを受ける人々は、こどもを大学に行かせたい低所得階層の人々や、雇用がないので自営業を始めようとする人々が代表的ですが、CDC(Community Development Corporation:まちづくり会社)と呼ばれる人たちも主な借り手です。
(CDCは一般名詞)
日本で「まちづくり」と言うとお役所の仕事ですが、アメリカではCDCという社会的企業(やNPO)が、低所得層の住宅開発を行ったり、安全な街を作るパトロールを行ったり、商店街の共同キャンペーンを行ったりしています。CDCはCDFIからお金を借りて、こうした活動に投資し、まちが賑わったら会費や寄付をたくさんもらえ、自分たち自身の売り上げを伸ばせる、という仕組みになっています。
日本でもこうしたことができないでしょうか?
例えば都市部のひとり親世帯の貧困解消のために、フローレンスがひとり親の子どもたちに奨学金を提供します。その原資をどこかから低利か無利子で借りて、ひとり親たちに少しの利子を乗せて貸し出しを行えれば、フローレンスとして事務経費を賄いながら、ひとり親の方の貧困脱却を後押しできます。
また地方部においては、空洞化していく町の活性化に、まちの人々が立ちあがり「まちづくり会社」を創ります。
(長野県小布施市のア・ラ・小布施、熊本県の熊本城東マネジメントのように。)
「まちづくり会社」は地域の観光資源を掘り起こし、それをアピールし、近隣都市から人を呼び町にお金を落としてもらうことで、町の活性化は進みます。こうした「まちづくり会社」は町の人々の出資によって結成しますが、それだけでは十分でないので、どこかが低利子で貸してくれれば、立ち上がりもスムーズです。
例えば、このような貧困是正や地域活性化にお金を回せれば、日本を覆う閉塞感を、起業家精神と渾身の事業によって、打ち破ることができるのではないでしょうか?
ではどうやってお金を持ってくるか?税金?否。
約900兆の負債にあえぐ我が国に、金を無心してはいけません。
それならどこから持ってくるか。一つだけ可能性があります。
それが「休眠口座基金」です。
休眠口座とは、銀行で口座は作ったものの、口座の存在を忘れたり、預金者が亡くなったことで使われないでいる預金口座のことです。この口座は 10年経つと、銀行の収益になります。しかし、このお金はもともとは国民のお金なのです。国民に返す、あるいは国民の未来へと投資するお金として活用した方が、よっぽど国益に資するのではないでしょうか?
実は諸外国では、この休眠口座を使った社会問題解決のための基金が創られています。
代表的なものは、イギリスの”Big Society Bank”です。
彼らは、”Dormant Bank and Building Society Accounts Bill“という法案を通し、
50万口座(=650億円)にものぼる休眠口座を回収し、それを原資に“Big Society Bank”を創り、社会的企業支援やマイクロファイナンスを行おうとしているのです。
同様の仕組みはアイルランドやカナダ、そしてお隣韓国にもあると言います。
日本では、三メガバンクだけで平成22年3月末に303億円、21年3月末に242億円の休眠口座を益金計上しています。日本全体では数千億円規模の休眠口座があるのです。
これほどのお金を、地域の活性化に立ちあがる地元の事業家達に貸し出したら、どうなるでしょうか。
大学に行けずに高卒で働きに出ようとする、児童養護施設の子ども達に学資奨学金として貸し出したら、どうなるでしょうか。
国内災害があった時の、被災者の人々への緊急貸付に使えたら、どんなことがおきるでしょうか。
成果が出るまで長い期間がかかる土壌汚染改善のプロジェクトに長期低利子で貸し出せたら、どうなるでしょうか。
長い期間とお金のかかる難病研究に、成功時は特許開放という条件を付けて投融資できたら、どうなるでしょうか。
全国のNPOバンクと中間支援団体の方に無利子で貸し出し、彼らが地元から社会起業家を発掘し、低利の立ち上げ融資を行ったら、どうなるでしょうか。
考えるだけで、日本がメリメリと良くなっていく音が聞こえてくるようです。
私は提言したい。日本版「休眠口座基金」の創設を。
そして省庁の天下りの方が中心の特殊法人による運営ではなく、民間人主体で役員報酬まで完全にオープンなNPOとして運営していくのです。
今回、新しい公共関連のさる委員会委員として選出して頂いた私は、上記のような構想を提示して参りたいと思います。心ある官僚・政治家、そして市民社会の皆さん、ご協力下さい。
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当記事はNPO法人フローレンス代表理事 駒崎弘樹の個人的な著述です。
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