駒崎 弘樹 公式ブログ 事業ニュース

7月25日第三回子ども子育て会議基準検討部会と7月26日第五回親会議の議事録まとめ

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いつものように、実況報告です。今回から、特徴的な発言やポイントを箇条書きにして説明を付けます。
 
【特徴的な発言】
・稲見委員(全国病児保育協議会会長)「現在人材配置基準が1:3。健康児の小規模保育でも1:3である。以前の1:2に戻すべき。市町村同士の乗り入れがもっと進めば、施設型が促進される。現在、施設建築補助がない。考慮してほしい。派遣型について、否定しているわけではない。」「派遣型は危険だ。病児保育はまず就労支援ではない。子どもが重要だ。担い手の資格を厳しくすべきだ。」
 
このように、病児保育の施設の業界団体は、訪問型病児保育に対し、否定しているわけではないと良いながら、危険だと否定しています。その際の理由として定義も曖昧な「子どもにとって」というロジックを持ち出しています。
 
小児科の数自体が少なくなっている中、小児科しかできない施設型病児保育で、全てのニーズを満たせるわけがありません。新しい訪問型も組み合わせていき、多層的なセーフティネットを構築しなければいけないにも関わらず、非常に視野狭窄な考え方だと思います。また、子どもを家から連れ出さずに、子どもの家でみる訪問型病児保育は、むしろ子どもにとっては負担が軽い手法です。
 
ここでも分かるように、「子どもにとって」という言葉が、体の良い自己正当化のロジックになる、というのも、この保育業界ではよく見られることです。こうした他業界団体の圧力に屈すること無く、病児保育が真の社会インフラとなり、親にとっても子どもにとっても良いものになるよう、努力していきたいと思います。
 
・北條委員(全日本私立幼稚園連合会副会長)「延長保育と病児保育に意見がある。エンゼルプラン以降、子どもの環境は悪化している。13時間保育は子どもにとって良くない、8時間に戻すべき。延長保育の量的拡大には反対。」「病児保育について。現場の人が頑張っているのは知っている。だが、親がまず休める環境を創るべきだ。量的に拡大するのは反対。」
 
幼稚園業界団体からは、病児保育や延長保育全否定論が出ました。こちらも「子どもにとって」のロジック。先ほどの稲見さんの時もそうですが、「子どもにとって」「どうとでも使えるマジックワード」。本来の意味から離れて、「俺が正しい→彼らが間違っている」時に使える政治的言説です。
 
一部の幼稚園団体にとっては、母親が働くことは「本来だと望ましくないが、仕方が無い」という取られ方しかしていないということが、この発言だけでも分かりますね。
 
そして「本当は親が休み得る環境をつくるべきだ」というのも病児保育に対する批判で良くあるのですが、これもナンセンスです。「親が休めるような環境をつくる」と「病児保育を拡充する」を両方やって行けば良いだけなのに、「親が休める環境をつくる」という達成時間がロングスパンなものを「まず先に」と勝手に序列化して、倫理問題にすり替えてしまっています。
 
現実的には意味の無いロジックだと言えるでしょう。
 
このように、審議会ではそれぞれの業界団体が、子どものためと良いながら自分たちの「信仰」をぶつけているだけ、という光景が頻繁に見受けられます。今回はそのよりどころの「子どものため」というお題目が如何にどうとでも解釈できるものか、が分かりやすい形で発露されていたので、ご紹介しました。
 
そしてこうした単なる信仰の違いとぶつかり合いが現実の政策に大きく影響を及ぼしているがゆえに、「中長期的にも全体最適」な政策の実現を阻んでいる、ということも、審議会のオープン化によって見て取れるかと思います。
 
以上、今回の簡易説明でした。
 
【議事録リンク】
7月25日 子ども子育て会議基準検討部会 実況議事録
 
7月26日 子ども子育て会議(親会議) 実況議事録
 
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