駒崎 弘樹 公式ブログ
提言・解説・アイディア
やまもといちろうさんの休眠預金に関する記事について
朝4時半起きでニュース番組に出て待機児童問題について語ろうと思ったら、突然上西議員のセクシー写真集についてコメントを求められる人生に、これで良いのだろうかと感じている駒崎です。
さて本日、やまもと切り込み隊長いちろうさんが、下記の記事をアップされました。
やまもとさんのような著名な方に地味な休眠預金のテーマを取り上げて頂き、ありがたい限りなのですが、
誤解や事実誤認をされていらっしゃる箇所も散見しますので、訂正がてら記事を書けたらと思います。
【駒崎の役割についての誤解】
「お話の発端は、病児保育のNPOを運営されるなど活動的な社会起業に従事されているフローレンスの駒崎弘樹さんが、(中略)かねてから検討を重ねてきたものです。」ということで僕を主語にして下さっているのですが、このプロジェクトは僕が声がけはしていますが、民間公益活動をしてきた有志の人々がチームで行ってきたものです。
チームは休眠口座国民会議という名前で、WEBサイト(http://kyumin.jp/ )を作って活動報告や意見交換のシンポジウムを4年間ほど行いながら、政策提言をしてきました。僕はその一員という位置付けです。
【目的の誤解】
やまもとさんは、「NPOやNGOに対して、休眠口座の資金を利用し活動を支援・助成できる仕組みを用意することで必要な社会起業を側面支援していこうという内容」とおっしゃっていますが、そうではありません。
超党派議連の法案では、最初に以下のように規定しています。
「この法律は、休眠預金等に係る預金者等の利益を保護しつつ、休眠預金等に係る資金を民間公益活動を促進するために活用することにより、国民生活の安定向上及び社会福祉の増進に資することを目的とする」
民間公益活動を促進することで、困っている人々を助けていこう、というものです。
世の中には、ひとり親や貧困状態にある子どもや累犯障害者や児童擁護施設を出た青少年等、制度では支えられていない人々がたくさんいらっしゃいます。
そういう人々を支える「民間公益活動」をバックアップしていき、困っている人々を助けよう、と。
もちろん民間公益活動というのは、NPOだけでなく、社会福祉法人かも学校かも医療法人かも町内会かもしれないわけです。よって、これはNPO・NGO支援だけのものなんだ、というご指摘は当たっていません。
【経緯の誤解】
またやまもとさんは「『韓国(イギリス)では、休眠口座で消失した資金をガバナンスのしっかりしたファンドや国債など安定財源で運用し、その利益をNPO/NGOなどに分配する』話だったのが、なぜか日本では『発生する休眠口座の資産をそのまま管理団体に払い込み、NPO/NGOに分配する』話になってしまいました。」とご指摘していますが、最初からそういう話はありません。
イギリスのBig lottery Fund や韓国の微笑金融中央財団は、休眠預金をいつでも返還できるように返還想定分を取っておきながら、一部を取り崩し助成などに使っています。
当初より休眠口座国民会議はイギリスや韓国を参考にした仕組みを提言していたので、「最初と話が違う」ということはありません。
【一般財団に関する誤解】
「駒崎さんにもお話をお伺いしましたが、公益であると使途や活動が所轄官庁に縛られることが多いので一般財団法人にされたという経緯を伺いました。」とありますが、僕の伝え方が悪かったのだと思いますが、そうしたことは申し上げておりません。
公益財団協会の太田理事長もご提言されているとおり、現在の公益財団・公益社団を所轄する内閣府の公益等認定委員会の運営には大きな問題があり、業界内では盛んに議論されているところです。
ここでは詳細に踏み込みませんが、問題のある公益法人制度に編入されるよりも、民間ベースで透明性の高い運営を行っていく一般財団+審議会によるチェックという体制の方が、より説明責任を果たしていけるのではなかろうか、と提言を行って経緯をお話ししました。
【ザル法であるというご指摘について】
これは誤解ではなく、ご意見だと思うので受け止めつつ、法律にどこまで書き込むべきなのか、という法技術的なスタンスの違いがあろうと思います。
例えば、僕の専門である子ども子育て支援法(http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/law/kodomo3houan/pdf/shien-h.pdf )において、小規模保育は「この法律において「小規模保育」とは、児童福祉法第6条の三第10項に規定する小規模保育事業として行われる保育を言う」としか書かれていないわけです。
で、児童福祉法第6条の三の10項になんて書いてあるの、というと、以下のことしか書いていません。
—–
○10 この法律で、小規模保育事業とは、次に掲げる事業をいう。
一 保育を必要とする乳児・幼児であつて満三歳未満のものについて、当該保育を必要とする乳児・幼児を保育することを目的とする施設(利用定員が六人以上十九人以下であるものに限る。)において、保育を行う事業
二 満三歳以上の幼児に係る保育の体制の整備の状況その他の地域の事情を勘案して、保育が必要と認められる児童であつて満三歳以上のものについて、前号に規定する施設において、保育を行う事業
——
単に、三才未満で、6人〜19人のものだよ、と言っているに過ぎないわけです。
で、これで運営ができるのか、というとできないわけです。このままだとザルです。ザルすぎます。
そこで、法律で大枠は定め、細かい部分は政省令(や施行規則)で規定しよう、とするわけです。
休眠預金に関しては内閣府が所管なので、内閣府令になります。
監査などの仕組みについては、当然内閣府令で定まっていくことになります。というか、そういうことに一切触れない内閣府令になるわけがありません。
よって、法律でどこまで定めるかは難しいところですが、現状政省令で規定していこうという流れになっているので、僕は個人的にはザル法というご指摘は言い過ぎかと思っております。
以上、記事についての返信第一弾です。
その他韓国における休眠預金の活用等、チェックとガバナンスに関する基本的な誤解などもありますが、長くなりすぎてしまうので一旦あげたいと思います。
なお、休眠口座国民会議では、休眠口座に関する様々な誤解に関して、また議論の過程をWEBにて開示していますので、よろしければ参考にしていただけたらと思います。
また休眠預金活用議連の方々も、WEBサイトで法案を開示されていますので、ぜひご覧になっていただけるといいと思います。(パブリックコメントも募集していました)
最後に、僕とは意見や認識が違うとはいえ、ご興味とご関心を持ってご指摘くださったやまもといちろうさんに、心より感謝したいと思います。また、誤解を与えてしまったのは、僕の説明不足がきっとあったと思うので、今後はさらに透明性の高い発信を心がけていきたいと思います。
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