駒崎 弘樹 公式ブログ 提言・アイデア

「極右政治家」という噂の稲田朋美さんと対談してみました

 新たに防衛大臣になった、安倍総理の後継と言われる稲田朋美議員。
インタビュー当時は政調会長だったので、子ども子育て政策を中心に幅広に問題意識をぶつけるために、対談を組んで頂きました。
【意外な合意点の数々】
 稲田大臣は、LGBT問題に対しては、「人権問題として周知理解を進めていくべきだ」とおっしゃり、子どもの貧困に関しては「「2030年まで子どもの貧困半減」というのは素晴らしい目標」と話され、ひとり親の養育費が2割しか払われていないことには「裁判所が財産を把握できるようにし、義務を果たさない人には罰則を科す。すべて大賛成」と答え、「女性が働きやすい社会は、男性も働きやすい社会」と主張します。
 これだけ見ると、写真を蓮舫さんに変えても違和感を持たないような内容です。
どうやら、中道左派の僕とも、合意できるポイントは多くあるようです。
【「リベラル」な人たちの罵詈雑言】
 さて、この対談の後、多様性を愛でる日本型リベラルな方々から、SNS等で、もろもろ批判を頂きました。極右と馴れ合うのは、どういうことか、と。この提灯持ちが、と。
 はい、あるあるです。僕はこの10年、これを言われ続けていました。民主党政権の時に、パートタイムの官僚になって寄付税制改革(寄付控除率ほぼ0→50%に)に携わった時も、「体制寄りプロ市民」でしたし、第三文明の取材に答えると「創価学会信者」と言われるわけですね。
 で、ネトウヨみたいな人から別に何言われても良いんですが、中道左派の僕としては、日本型リベラル(和リベ)の人たちが、すぐ「友敵図式」に持ち込んじゃう習性って、本当にもったいないな、と思うんですよ。
【日本型リベラル(和リベ)がダメな理由】
 都知事選挙の時も思ったんですが、すぐに「あいつは敵だ」と吹き上がり、「あの人のここは評価できるね」という言説すら許さない。そうやって少しでも意見が違うと撃ち始め、やがて同じ考えの純血主義に陥り、セクト化していって、大衆から遊離していくわけです。
 浅間山荘事件から、いったい何を学んだのでしょうか。鳥越陣営は、負けるべくして負けたと思います。そして都知事選が終わっても、何らの反省も総括もなく、おそらく東京オリンピックくらいまではしばらくこのままなんでしょう。

【大切なのは意見の違うやつと、話してみること】
 僕は自民党の改憲草案が、本当に嫌です。特に24条の家族条項(国家が国民に「家族を大切にしろ」と命令する条項)が。そういう意味で、自民党とは意見が違います。
 だから、それを稲田議員にも伝えました。すると稲田さんは、「家族のあり方まで国が決めるのは実は違和感がある」と言います。結構踏み込んだ発言です。当時、自民党の政調会長ですからね。暗に改憲草案に賛成できないことを言っているわけです。
 じゃあ、その部分では握り合えるわけです。そしてこの24条が実現しそうになった時には、もしかして反対に動いてくれるかもしれないんですよね。そういうことも、話してみないと分からない。稲田さんを悪魔化して、とんでもないやつだ!と激昂しても、その場ではスッキリするかもしれない。でも、本当に何かを変えたかったら、どこが賛同できて、どこが意見が違うのか、を対話して探っていくことです。
 そして、意見を変えてもらいたかったら、様々な手段を通じて、説得していくこと。罵声を浴びせかけても、人は意見を変えません。データだったり、事実だったり、大切な人からのアドバイスだったり、支持者からのお願いだったり、その人が耳を傾けるやり方で、説得していかなくてはなりません。

【これからの社会運動に必要なこと】
 あるイシューに対して、党やイデオロギーを超えて、合意できる点で繋がっていき、少しずつでも結果を出していくこと。待機児童問題解決でも、子どもの貧困についても、取れる手段に左右の違いはあんまりないわけです。
 また、経済界・NPO業界・官界とセクターをクロスオーバーしていくことも重要です。市民運動な人たちだけ騒いでいても、なかなか世の中にイシューとして認識されづらい。だとするならば、シンパシーを感じてくれる産業人やオピニオンリーダーも巻き込まないと動かない。そう言った時に、極端な友敵図式は有効ではないのです。
 和リベや市民運動の方に、もう一度問うてほしいんです。
「あなたは社会を変えたいのか。それともスッキリしたいだけのか」
もし前者なら、「やり方」を工夫していきましょう。
*告知
・対談の中にある、子ども・子育て政策については、ライフネット会長の出口さんとの共著に詳しいです。
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