こどもの日に考える、究極の少子高齢化対策
こどもの日なんだけど、絶賛少子化真っ最中です。
つい最近まで一学年っていったら100万人だったのですが、今や80万人を切りました。このままいくと、数百年後には日本人がネアンデルタール人みたく絶滅します。
それもあって、政府は「異次元の少子化対策」ということで、子育て支援対策を次々と打ち出しています。(その中の幾つか、例えば「こども誰でも通園制度」とかは我々の提案を採用してくれて感謝しています)
ですが、結婚した女性の出生率である結婚出生率ってこの50年くらいあまり変わってなくて、少子化を加速しているのは「結婚してない女性の増加」だから、そこには子育て支援策はダイレクトには効きづらい、っていう弱みがあるんですね。そう、いわゆる非婚化と少母化の問題をどうするの、と。
「いやでも、結婚しない人たちにできることってないでしょう。政府がお見合いパーティーでもするんかい」
そんな声も聞こえてきそうですが、さにあらず。
日本では、結婚と出産が分かち難くくっついているので、結婚が減ったら出産もダイレクトに減るわけなのですが、海外ではそうではないのです。
ここでフランスを見てみましょう。
【結婚で生まれる子よりも婚外子が多いのはなぜ?】
フランスでは、既に結婚(法律婚)で生まれる子どもよりも、婚外子が多い状況です。
その割合はなんと6割。
この「結婚は減ったけど、そのまま子どもが減る状況にはさせなかった」功労者が、「PACS」です。
PACSは Pacte Civil de Solidarité の略で、日本語にすると「市民連帯協約」と訳せます。でも固すぎる日本語なので、僕なりに超訳すると「あたらしいパートナーシップ」制度です。
結婚よりもライトにパートナーとして認定してもらえて、同棲よりも権利が保証されている制度。パートナーシップの内容については、PACS契約書によってカップルごとにカスタマイズ可能。さらに法律婚が別れる時に両者の合意を必要とするのに対し、PACSは片方が嫌になったら解消できるのです。
この制度の使い勝手が良く、フランスでは法律婚で生まれる子どもよりもPACS婚で生まれる子どもが多くなった、というわけ。
この制度、よく考えたら、今の超少子高齢社会の日本にピッタリなんでは!?
理由をお話しします
【人生100年時代に法律婚は無理ゲーでオワコン】
2007年に日本で生まれた子どもの何割が100歳まで生きるでしょう?
答え。半分です。
そう、僕たち世代でも、かなりの多くの人が100歳近くまで生きる可能性が高い。
良いことなんですが、そうだとすると、平均年齢が43歳だった明治時代に作られた民法が規定するあり方とは、かなりかけ離れちゃう。
つまり、現代人としては、30歳やそこらで「あと70年、お前のこれまでの人生より長い間、一緒に暮らすたった1人の人を選べ」って、その決断重すぎない?っていう話なんです。
さらに日本の場合、女性はこれまでアイデンティティの一部であった苗字を捨てないといけなくなります。実績や評価と紐づいたブランドをリセットしなくちゃいけない。
(加えて、LGBTQの方々は同じ人間なのに、法律婚の機会すら与えられていませんし)
それにうまくいかなくて別れてひとり親になろうものなら、政府の補助が諸外国と比べ少なすぎ、いきなり貧困に叩き落とされます。およそ54%のひとり親は貧困状態にあり、これはOECD最悪レベル。
なんだこの制度、重すぎるし、ハードル高すぎるわ!っていうのが正直なところだと思うんです。
【日本版PACSを導入してみたら?】
そこで、日本版PACSを導入しようよ、と。日本にはメリットいっぱい。
1)結婚のハードルが下げられる。とりあえずPACS婚して、うまくいけそうだったら法律婚しようか、っていう階段を創れる
2)選択的夫婦別姓が実現できる
3)同性パートナーシップを実現できる
というのは、基本的には実現できます。更に、
4)100組いたら100通りのパートナーシップを描ける
ということがあります。PACSはPACS契約書でパートナーシップの内容を決められます。結婚したことある人ならご存知かと思いますが、法律婚って、何を契約したのか、いまいち不透明です。
「病める時も健やかなる時も愛する」ことは牧師の前で約束させられた気がするのですが、よく考えると病気の時も愛せよってちょっとブラックだし、愛せよって内面に踏み込まれても困るよ、って思うわけです。病気の時くらい寝かせてよ、と。
結婚で何をするのか、期間はどのくらいで、どういうことはしちゃいけないのか、全てが曖昧なままスタートするので、一緒に暮らし始めてから、何十回も衝突を繰り返し、言語化し確認していきます。
そんな民間契約って、結婚以外に存在します?
「それが結婚ってもんだよ」っていうのは分かるのですが、だったら最初から対話して約束事を決めておこうよ、と。
例えば、子育ては両者とも関わります。家事は半々でやります。パートナーシップは3年に1回見直しましょう、とか。もちろんカップルごとに最適なバランスや役割分担があるので、それは対話して決めていけば良いわけで。また、一度決めても時を経て変わっていくこともあると思うので、定期的に見直して、アップデートしていけば良い。
PACSではPACS契約書を通じて、そういった対話と関係性の設定が促されるわけです。
【高齢化にも日本版PACSは効く】
更に日本にとって深刻なのは、高齢社会化です。
2042年には高齢者人口が4000万人!となり、就職氷河期世代の独居高齢者が大量に生まれます。
就職氷河期で非正規雇用で働かざるを得なかった、また低年金・無年金の独居高齢者が大量に発生し、それを社会が支えきれなくなることが示唆されています。
これをベストセラー「未来の年表」著者の河合雅史さんは「日本最大のピンチ」と呼んでいるほど。
さて、こうした苛烈な高齢社会において、日本版PACSは役に立ちます。
すなわち、高齢者の方々が「共に住む」という選択肢を提示してくれるからです。
「マダムたちのルームシェア」という人気漫画があります。
これは、高齢女性たちが送る共同生活を描いた作品なのですが、ここにヒントがあります。
皆さんもご存知の通り、女性は男性よりも長生きします。夫が亡くなった後、女性が独居で暮らすことが増えます。その後に、「気の合う友人同士でルームシェアする」ということができたなら。
独居でいるよりも生活基本コスト(家賃や水光熱費)を下げることができますし、精神的孤立を予防できます。また、通院や行政手続きを一緒に行ったり、と助け合うこともできるでしょう。行政からすると、独居の高齢者にアウトリーチするコストよりも、世帯で助け合ってくれた方が行政コストを下げることもできます。
日本版PACSはこうしたライフスタイルを後押しできるでしょう。例えばPACSでパートナーシップ(ファミリーシップ)を組んだユニットの人たちには、公営住宅に入れますよ、とさせるとか。(現在は単なるルームシェアはダメ、となっている都道府県が大半です)
フランスでは同性パートナーシップの保証から生まれて、異性カップルに広がったPACSですが、日本版PACSでは来るべき「超独居高齢社会」への備えとしても機能していくことでしょう。
【「あたらしい家族」を支える制度】
そう考えると、日本版PACSは、「あたらしい家族」を生み出すための新たな政策的道具立てだと考えることができるでしょう。
生まれた家族は選べません。しかし、我々は大人になって、自分の家族を創っていくことができます。しかも、一度きりではなく、何度も。
それは狭い意味の法律婚に限定されなくても良い。夫と死に別れた後、あるいは子どもが家を出たのをきっかけにした「卒婚」の後、仲の良い友人同士と楽しく暮らしていく。そうした人生の第二章、第三章を前向きに開いていくことを、日本版PACS(「あたらしい家族」支援法)は実現していくことができはしまいか。
こどもの日を、こうした未来の家族制度について考えられたらどうでしょうか?
少子化し、高齢化していき、一見どう考えても絶望的な我が国の未来に、新しい家族のあり方と、新しい生き方の可能性を見出していくのも、悪くないでしょう?
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