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【書評】「集合知の力、衆愚の罠」

なぜ、素晴らしい成果をあげられる集団と、後から考えると狂ったとしか言いようのない行動を取る集団がいるのだろうか。


その違いに迫るのが、拙著「社会を変えるお金の使い方」も出版してくれている英治出版から出た「集合知の力、衆愚の罠」である。

集合知の力、衆愚の罠――人と組織にとって最もすばらしいことは何か
集合知の力、衆愚の罠――人と組織にとって最もすばらしいことは何か アラン ブリスキン,シェリル エリクソン,ジョン オット,トム キャラナン,上原 裕美子

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詳細は本書本文に譲るが、冒頭の問いの理由の一つが「確証バイアス」である。
認知科学用語であるこの「確証バイアス」とは、人はあらかじめ持っていた考え(先入観)を補強するように物事を認知していく傾向があることを言う。例えば、「最近の若いやつはどうしようもない」と確信している老人がいるとしよう。彼は多くの若者と町ですれ違うが、その内の一部の若者が電車の中で老人に席を譲らなかったとしよう。老人はその一部の事例を(無意識のうちに)積極的にピックアップし「ほら、やっぱり最近の若者はどうしようもない」と先入観を補強し、ますます「最近の若者はどうしようもない」という思いを強くし、無意識のうちに「どうしようもない若者」の事例を求め、ますます先入観を補強する解釈を行う。
集団はフラットに知性と感性を働かすことで、集合の和以上の成果を残すことができる。しかし、確証バイアスは集団にフラットな知性を働かすことを妨げ、思いこみへといざない、フラットな後世から見ると狂人としか思えない行動へと「普通に」爆走する。
この本を読み、僕は嫌な気持ちになった。
現代を生きる我々日本人こそ、強い確証バイアスによって支えられていまいか?
「日本はダメだ」という。
だから私達は、日々ダメな日本に関する情報ばかりが目に入り、日本はダメだ、という信念を固くする。
そこにある潜在力や先人達が積み上げてきた遺産、治安や教育水準等世界に誇るGDPに換算できない素晴らしさは無視される。それによって、強みを伸ばしていく政策や行動は非現実的だと思われるし、潜在能力を花開かせる行為は絵空事だと断じられる。
そして成長や改善の芽は摘まれ、自己実現的に「日本はダメだ」が達成されていく。
本書の言うとおり、確証バイアスが衆愚への道を走らせるならば、
我々は確実に衆愚へと歩もうとしているのではないか?
「日本はダメだ」と嬉々として呟きながら。
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